「うぉっしゃああああー!!」
火神の歓喜の雄叫びが体育館に響く。
先輩たちも喜びを隠せずガッツポーズ。
「・・・黄瀬?」
勝利を掴んだ誠凛とは逆に落胆の表情を見せる海常。
その中でエースとして頑張っていた黄瀬は1人涙を流していた。
そういえばアイツ生きてて1度も負けたことがないとか言ってた事を思い出した。
そのプライドが崩れてしまったという所だろう。
しかし今は笠松さんのフォローがある。
きっと次に会う時はその悔しさをバネにして成長した黄瀬が見られるんだろうなと思うと口許がにやけた。
「さて帰るわよー!」
「カントク。先帰っててください。俺ちょっと黄瀬に用事あるんで」
「黄瀬くんに?まあいいわ。終わったら連絡してちょうだい」
「っス」
笠松さんに聞いて裏の水飲み場へと向かった。
そこには頭から水を被る黄瀬の姿があった。
「よ、黄瀬」
「真白っち・・・どうして・・・」
いきなり頭をあげたことで、頭からの水滴が黒いタンクトップへと落ちる。
「別に。ただ今日の試合よかったって言いに来ただけだ」
「茶化しに来たんスか?」
「別に俺はそう思ってはいない。お前がそう思ってるならそれはそれでいいが。ただ、俺が見た中で1番カッコよかった」
意味わからないっスよ!と黄瀬は叫び俺の肩を掴んだ。
肩にあった手はするすると俺の胸元まで降り、ぎゅっと抱き締める。
水滴がジャージにつこうが俺はお構いなしに黄瀬の震える背中を撫でた。
「あの頃のお前のプレイはどこか淡白だったんだ。勝利が当たり前だと思ってて勝負に執着してなくて。その点今日のお前は勝負に貪欲だった。だからこそ涙がでたんだろ?」
「あそこまでっ悔しい思いしたのっ・・・初めてだったっス!頑張っても2人に届かないし、それにっ」
「だからこそこれからがあるんだ。お前はもう海常の7番なんだ。けして帝光の8番じゃない」
だからこそ立ち上がってまた同じコートでプレイしよう、と言って俺は黄瀬を離す。
タオルを黄瀬の頭にかけて踵を返した。
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