「いやいやなに言ってんのダメ!ケガ人でしょ!てかフラついてるじゃない!」

「今行けってカントクが・・・」

「言ってない!たらればがもれただけ!」

「・・・じゃあ出ます」


黒子はアイツらの中で見た目によらず一番頑固だった。

自分がこうだと思えば必ずやる。

そういう男だ。


「僕が出て戦況を変えられるならお願いします・・・それに約束しました。火神くんの影になると。そして真白くんの悲しそうな顔を見せないと」

「・・・・わかったわ。ただしちょっとでも危ないと思ったらすぐ交代します」


選手交替の合図のホイッスルがなる。

俺はすぐさまコートの外にいる黒子と手を合わせた。


「・・・もういいのか?」

「ええ。ありがとうございます。本当は真白くんと一緒にコートにいたかったのですが」

「約束は約束だ。また今度やればいい。いつだってできるだろ」

「・・・はいっ」


俺はベンチに戻りタオルで汗を拭く。

丁寧に畳まれた自分の上着を着て、カントクの隣に座った。


「お疲れさま、久遠くん」

「俺別にそこまでやってないんで。その言葉は今コートに立ってる黒子たちに言ってください」


そう素っ気なく言ったのがカントクの感に触ったのか、何処に隠されていたか分からないほどの馬鹿力で背中を思いっきり叩かれた。


「黒子くんや火神くんって可愛くない後輩って思ってたけど前言撤回するわ。久遠くんの方が可愛くない。もうちょっと自分の事認めなさい。貴方が中継ぎしてたおかげで点差はあまり広がってないわ」

「それはどうも・・・。でも逆転はできていないですよ」

「あら。私は逆転しろってなんて一言もいってないわ。点差を広げないでって言っただけだもの。十分よ」


痛む背中を擦っていると、今度は頭を撫でられた。

正直カントクという人が俺には分からない。

あまり周りにこういう人がいなかったのもある。

俺はただなんとなく恥ずかしくなってタオルを頭から被り顔を見えないようにした。


黒子はまるまる20分休んでいたため少しは体力が回復したようで、元の影の薄さに戻っていた。

せっかく慣れたはずの海常選手はまた見えないパスに四苦八苦し始める。

黄瀬の間を抜き、火神や日向先輩にへとパスを繋げる。

80ー82。点差がどんどん詰まってきた。

そして、次の攻撃。

日向先輩の手にボールが渡り、シュートを放つ。


「まさか・・・ウソだろ・・・!?」









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