相手の監督をギャフンと言わせた黒子たちはコート全面使えるようになった。
そしてあっけなく引きずりだされたこの男、黄瀬。
海常のユニフォームに身を包み火神に近寄ってケラケラと笑う。
「確かにありゃギャフンっスわ。監督のあんな顔初めて見たし」
「人ナメた態度ばっかとってっからだっっとけ!」
「火神くん・・・ゴールっていくらするんですかね」
「えっ!?あれって弁償!?」
黒子があさっての方向を見据えながらカバンをおろし、火神はその言葉に1人焦る。
なるとしても半額だろ。
あっちの不備もあることだし、その証拠さえ見せつければな。
相手の監督が苦虫を噛み潰したような顔をして黄瀬を呼ぶ。
ようやく、おでましか。黄瀬。
「それでは試合再開します!」
笛の音でまた試合が始まる。が、黄瀬がコートに入ると女子が騒がしい。
中学の頃もそうだったなぁ・・・と思い出にふけっている隣でカントクは黄瀬の方をじっと見つめ汗を一つ垂らす。
「久遠くん。改めて見ると化物ね。黄瀬涼太は」
「しかし本人が言うとおりアイツはまだ下の方。他4人はそれを上回っている。それがキセキの世代です」
「ったく・・・本当に倒しがいがあるわね。今年は特に!」
逆境にもへこたれない肝っ玉をもつカントクは楽しそうに笑う。
そんなこんなしてるうちにボールは笠松さんから黄瀬へと周り、黄瀬は日向先輩を越すほど高く飛ぶ。
見たからな。アレを。
「こっちもアイサツさせてもらうっスよ」
「・・・!!」
黄瀬は先ほどの火神並みのダンクをかます。
おお〜!と外野から声が聞こえる中、笠松さんは黄瀬を蹴飛ばす。
「バカヤロ!ぶっ壊せって言っただろうが!」
「えええ〜!!」
壊れかけてるゴールだからこそ火神の力で壊せたものの、壊れかけてもないゴールを壊したらそれこそ化物だ。
だけど、いつかはそれが成せる日が来るかもしれない。
あるいは青峰なんかはもう・・・。
「女の子にはあんまっスけど・・・バスケでお返しし忘れたことないんスわ」
「上等だ!!」
黄瀬の挑発から再開する試合。
1分1秒、1手、1呼吸おしむ程の点の取り合い。
まだ開始3分だというのに16対17と海常が一歩リードしてるもののハイペースな試合展開になっていた。
DF陣も全力を尽くしているもののOFの力の方が圧倒的に強いだけの事。
これがキセキの世代同士の衝突・・・か。
体育やミニゲームでも見てはきたが昔と今では思いも賭けるものも違う。
お遊び半分、互いの能力を高め合うためのミニゲームと学校の看板を背負って、自分の信念を貫くための試合とでは全然違っている。
先輩たちも必死についてきてはいるが明らかにゲームの展開は黒子と火神、そして黄瀬が握っている。
どちらが崩れるか。ただそれだけ。
しかし先に崩れるのは・・・。
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