海常の監督はそれはそれは腹部はでかく、腹の立つ監督だった。
相手は俺たちとの試合はただの調整でしかなく、他の部員たちには学ばせるには少なすぎるので練習をさせた方がいい。
そうなったら片面でしてもらおうか。ボロいゴールを使って。
という練習片手間に相手してやってもいいぞ、と上から目線にも程があるような口ぶりで。
火神は勿論のこと、黒子や先輩もそんな相手の監督に怒りを向ける。
カントクなんて顔全体に怒りマークをつけていた。
そして極めつけに黄瀬抜きのレギュラー相手も務まらないかもしれないのに黄瀬が入ると試合にならない、とまで言った。
流石の俺でもカチンとくる。
一発殴ってやろうかと監督の方へ足を運ぼうとしたが伊月先輩に止められた。
相手の監督の前に黄瀬は立ちはだかる。
「大丈夫!俺ベンチには俺入ってるから!あの人ギャフンと言わせてくれればたぶん俺出してもらえるし!俺が我が儘言ってもいいスけど・・・オレを引き出すこともできないようじゃキセキの世代を倒すとか言う資格もないしね」
黒子と火神は目を細め、じっと黄瀬を睨む。
相手の監督の声で俺たちはバッグを持ち直し、控え室へと向かう。
「アップはしといて下さい。出番待つとかないんで・・・」
「あの・・・すいません。調整とかそーゆーのは無理かと」
「そんなヨユーはすぐになくなると思いますよ」
カントクと黒子の声が重なる。
黄瀬はニィィと笑った。
「それではこれから誠凛高校対海常高校の練習試合を始めます!」
相手の審判はキョロキョロと探す。
誠凛の人数が足りないとでも思っているのだろう。
そこにいるじゃないか、目の前に。
「あの・・・います。5人目」
「おおぇ!!?」
いつものパターンながらどうして笑いが出てくるんだろうか。
俺はベンチに座って1人笑う。
カントクの方を見るとヤバイ、と言ったような表情。
「そんなに相手、能力高いですか?」
「服越しだから全部は見えないけれど軒並み数値は高いわ。フィジカル面は完全に負けてるかも」
「そうですか。そうなると、火神と黒子の力がどこまで通用するかですね」
「ええ・・・そして貴方もよ、久遠くん」
「俺?」
試合開始のホイッスルが鳴った。
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