「おお〜広〜。やっぱ運動部に力を入れてる所は違うねー」
黄瀬の再会から数日後、俺たちは神奈川の海常へと足を伸ばしていた。
運動部全体が強い海常の校庭は誠凛よりも広く、部活生の掛け声が聞こえる。
流石、と言った所だろう。
それは全然いい。ただ、気になるのは俺の後ろの男の顔。
「火神お前どうした?お前目つき悪いぞ」
「ちょっとテンション上がりすぎて寝れなかっただけだ」
「・・・遠足前の小学生ですか」
「つーか久遠より悪くねーし!」
火神はいつもの顔の1.5倍は目つきが悪かった。
身長も体格もデカい火神は今繁華街でも歩いていたら100%の確率でアッチの人と間違えられてもおかしくはない。
「どもっス。今日は皆さんよろしくっス」
「黄瀬・・・!」
「広いんでお迎えにあがりました」
黄瀬はいつもの笑みを浮かべ、黒いタンクトップ姿で俺たちを迎え入れた。
黒子にフられたのがよほどショックだったのか涙を浮かべ黒子に近づく。
が、黒子持ち前のスルー力でかわす。
「あ、真白っちに渡すものがあるんスよ」
「渡すもの?なんか貸してたか?」
「いーえっ。これっス!」
ジャーン!と効果音でもつきそうな勢いで出されたのは海常のユニフォーム。
特注のSサイズですっと言って黄瀬は俺に渡す。
・・・俺にどうしろ、と。まずSサイズってふざけてる。
「黄瀬。このユニフォームをボロ雑巾にするために持ってきたのか?」
「そんな訳ないじゃないっスかぁ〜。サイズそれで合ってるでしょ?」
「合ってはいる。が、渡してどうする」
「俺たちのチームでプレイするために必要っスからね」
コイツ、既成事実でも作る気かよ。
火神は海常のユニフォームを奪ってヒラヒラと目の前で揺らす。
ふーんと興味なさそうな顔で黒子に渡す。
黒子はジッとユニフォームを見てカントクの方へ振り向く。
「カントク。これ黄瀬くんのものって言って高く売りませんか?」
「それいいアイディアね!部費の足しになるわ!」
「うわぁ〜ん。黒子っち返してくださいよぉ〜。それは真白っちの物ー!」
黒子は火神とユニフォームを投げ合いつつ黄瀬をからかう。
俺は飛び交う間でため息を付きながら体育館へと歩いて行った。
「こ・・・ここっス」
既に疲れきっていた黄瀬を尻目に体育館へ入ると俺たちは驚いた。
片面では練習をしている部活生、そしてもう片面では得点板などがおいてあり試合の準備が整っていた。
「なめられたもんだな」
「・・・・片面でやるの?」
カントクのボツリとした呟きは部員たちの掛け声でかき消された。
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