部活を休んだ次の日。
「久遠くん?どうして昨日休んだか吐いてもらいましょうか」
「いっいてえぇぇぇ」
俺はいい笑顔をしたカントクに招き入れられ、逆エビ固めを食らわされた。
女子とは思えない力で一瞬脳裏に沙月が思い浮かんだのは内緒。
どうしてか日向先輩と黒子を交えて3人に囲まれながら正座をさせられた。
「休むのは別にいいんだけど理由を教えてもらわなきゃねぇ。それに黒子くんだけじゃなくて私か日向くんに連絡してもらわなきゃ」
「・・・・すいませんでした。連絡しようと思ったらカントクの連絡先分からないし、急だったんで」
連作先を聞くのを忘れたのは本当の話。
しかし、理由をどう誤魔化そうか。
勘のいいカントクを上手いように誤魔化すのは至難の業。
しかもこれからも休まないという保証もないのでその場しのぎの嘘はダメ。
はぁ、とカントクはため息を付き俺の前に手を出す。
「携帯貸しなさい。私が入れてあげる」
ポケットから携帯を取り出し、カントクに渡す。
カントクは慣れた手つきで自分の携帯から俺の携帯へと連絡先を入れていった。
数分後、カントクから携帯が戻される。
俺の携帯にはカントクだけでなくバスケ部全員の連絡先が入っていた。
「これから休む時はこれで私と日向くんに連絡すること。それとどうして休んだの?」
「・・・急に検査が入っただけです。俺、週2で検査受けないといけないんで」
「検査?」
半分嘘で半分本当。
検査は受けなきゃいけない。
でも、加年停止(エンドレス)が始まってしまった今は兄貴たちと同じ半年に1回。
急に抜け出すこともあるかもしれないからちょうどいいと吐き出した嘘だった。
「久遠くんどこか悪いの?私が見る限りではなんともなさそうだけど」
「ちょっとしたホルモン異常です。日常生活もスポーツでも変化はないけどいつ変化するかわからないんで」
カントクの眉がピクリと上がる。
気づかれたかな。
いつもだったら日にちは決まってるんで前もって伝えます、と最後にひと押し。
半分ぐらいしか納得していない様子のカントクはそうなら早く言ってよ、と苦言を呈して去って行った。
「久遠大丈夫か?今日見学でもいいぞ?」
「別に体調が悪いわけじゃないんで大丈夫です。先輩、伊月先輩が呼んでますよ」
「そうか。でも少しでも気分悪くなったら言えよ?じゃあまた後でな」
日向先輩は俺の頭を軽く撫でると伊月先輩の元へと走っていく。
その様子を目で追いながらもはぁ〜と肩の力を抜いた。
後ろで見ていた黒子はお疲れ様です、と俺の肩に手を乗せた。
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