日向とカントクは仲良さそうに肩を並べて歩く。
傍から見ればさぞかしカップルのよう。
「ねぇ〜日向くん海がいいかなぁ〜?」
「あー海もいいなー」
「それとも山かなー?」
「あー山もいいなー」
「ちょっと〜ちゃんと聞いてる〜?」
「んーあー・・・つーかいーよどこでも。合宿なんてシゴければ」
「(地獄の行き先カップルみたいに決めんな!!)」
しかし話している内容はエゲつなかった。
なんせそれは俺たちの夏休みの生死がかかっていたのだから。
「今年は夏休みの初めと終わり海と山で合宿2回よ!」
「(両方きちゃった!!?)」
まさかの両方で俺たちは唖然とした。
2回って・・・2回って!
合宿では予選および練習試合での弱点克服が主。
ついでに言うとウチは少人数だから体力向上もかねて行われるらしい。
そして1つ重大な事が浮き彫りになった。
2回合宿をする、ということは費用が明らかに足りない。
どんだけ宿を格安にした所でマイナスになる部分はマイナスになる。
一番手っ取り早くて一番俺たちがしたくなかった方法を選択するしか余地がなかった。
それは・・・
「カントクが飯を作る!」
2年生全員の顔が真っ青に染まる。
1年生はなんだそんな事かとあっけらかんとしている。
バカ野郎!何も知らないからそんな顔しやがって!
「じゃあ・・・自分たちで作ればいいんじゃ・・・」
「そうしたいのは山々だが・・・練習メニューが殺人的すぎて夜は誰も動けん」
「死ぬかもしれない・・・!!」
流石に殺人メニューをこなして尚且つ殺人的料理を食うのが恐ろしい俺たちはカントクに試食会という名の練習をしてもらうことにした。
「では・・・カントクそろそろいいかな?」
「任せて!」
可愛らしいクマのエプロンをつけたカントクが包丁を握る。
ああめっちゃ怖い!人1人殺せるって!
カントクの料理風景を見ながらボソボソと俺たちは話を始める。
「ちなみに先輩たちは料理できるんですか?」
「そこそこ」
「だいたいなんでも」
「できん!」
「一番は水戸部と結城かな」
「黒子は?」
「ゆで卵なら負けません」
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