俺は高尾の言うとおり秀徳の控え室まで来た。
前まで来たはいいがノックができない。
だってこええし。
アッチもアッチで何しに来てんだ、って思うだろうから余計にできない。
俺チキンだもん!
オロオロしているとドアが独りでに開く。
「歩ちゃん先輩!待ってましたっ!」
「えっ?わっ・・・!」
ドアの向こうには高尾と緑間がいて、高尾が思いっきり引っ張るものだからバランスを崩してこける。
顔面からぶつかって、痛みをこらえながらとりあえず座り込んだ。
「ってぇ〜!!高尾何すんだっ!」
上を向くと高尾と緑間の他に金髪の先輩。
あれ・・・確かこの人って宮地さんだったっけか?
「どうです?宮地先輩。似てるっしょ?」
「・・・・だ」
宮地先輩は目を見開きながら体をプルプル震わせる。
一体どうしたのか。
俺は先輩の顔を覗き込むように見ると顔を真っ赤にして俺の肩を掴んだ。
「アユちゃんですよね!?」
「っはぁぁぁぁあ?」
アユ、とは俺の姉貴が俺が中学生の時に1度女装させてアイドルの運動会みたいなのに出場させた時につけた名前。
人が足りないからとまだ背が小さく華奢で声も声変わりする前のボーイソプラノだったからと無理やり行かされた。
種目には何も出ず応援だけしてたけど何やら写真を撮られたのを思い出す。
つかなんでこの人その事知ってんだよっ。あれ1回きりなんだぞ!?
「ひっ人違いじゃないですか?」
「いや、この匂い、この雰囲気、この肌の色きめ細やかさ!アユちゃんだ!」
「ぎゃあああああ変態ぃぃぃぃ!」
片手で頬をもう片方の手で髪を触られ、鼻息荒く迫られたら誰でも逃げ出したくなるだろう。
これがどっこい後ろでは尻間・・・緑間が俺の尻をがっちりホールドしてるがために逃げ出すことができない。
あ?高尾?高尾なら近くで笑い転げてるよ。
「うっひっひっひ!宮地さんの顔も真ちゃんの顔もきめぇ〜。ひっひっ」
「お前の顔も相当終わってるぞ!高尾!いいから助けやがれええええええ」
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