「つーか歩先輩料理できるんだ・・・ですね」
「意外です」
「意外ってなんだ。意外って。最近の男は料理できないとモテないからな」
も●ズキッチンのように!
まあきっかけなんて小さい頃から見てたひと●でできるモン!が影響だったりする。
おかげでみるみる腕は上達したさ。
「いいですね。キッチンに立つ先輩とか。想像しただけで勃ちそうです」
「ハハハ。黒子は面白いなぁ。ナニを考えてたんだ?」
「もちろんナニに決まってるでしょう。木吉先輩こそナニ考えてたんですか?」
「ナニナニ言いすぎだろ、お前らぁ!」
「何ヒソヒソ話してるのよ。できたわよ。まず1品目は・・・カレーよ!」
コトリと皿に盛られて出されたのはまるごと野菜が入っているカレーだった。
ちょさっきの包丁の軽快な音はなんなんだったんだ!
「まあ見た目はともかく味は大丈夫よ!ただのカレーだし!」
満面な笑みを浮かべるカントク。
俺たちは恐る恐るスプーンを手に取り一口食べた。
「(マズー!!)」
そりゃあもちろんクソまずかった。
お粥のようにしっとりと柔らかい米!
サラダのようにシャキシャキと火の通ってない野菜たち!
ていうか生肉!
そしてルーには謎の苦味と酸味!
味の大虐殺!
「じゃんじゃん食べてねー!」
しかも寸胴で作られたとくれば俺たちはもうお手上げだ。
涙を浮かべながら口に運ぶが体がそれを食べるなと拒否する。
そんな様子を見ていたカントクは少し悲しそうな瞳で絆創膏だらけの指を隠す。
日向はそのカントクの様子をじっと見てバクバクと無心でカレーを食べ進め、てんこ盛りにあったカレーを平らげた。
それを見た木吉と俺もガツガツと食べ進める。
「ごっそさん。うまかったけどちょっと辛かったから飲み物買ってくるわ」
日向は1人震える足を叱咤しながら家庭科室を出て行く。
「味は個性的だけどイケるよ。料理に一番大事なのは入ってる。愛情がな。けどもしかしたら作り方どっか間違えてるかもな。もう一度作ってみないか?」
木吉はおかわりもらうよ、とカレーをもう一度よそう。
「ま、去年よりかは美味しくなってるよ。カントク」
俺はカントクの頭をポンポンと撫でて日向の後を追うように出て行く。
「日向!結城!」
伊月は血相を変えて廊下にでる。
日向と俺は互いに顔を見合わせて廊下に倒れる。
くだらない意地を張ったのがいけないのか、それともその維持よりもカントクのカレーの威力が強かったのか。
俺たちは燃え尽きるように真っ白になった。
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