日向夢【秘蜜〜黒の誓い〜/ひとしずくP】
「なあ、日向」
「んだよ」
日向の部屋で俺たちは何もせずただ寄り添って座っていた。
「お前だったらさ。本当に好きな人がいたら全てのしがらみを取り払ってまでも一緒にいる?」
「ったりめーだ」
「そう、だよな」
ハハハ、とから笑い。すぐに俺はうつむいた。
また無言の時が流れた。
部屋の時計だけがカチカチと音を立てる。
日向はそんな空気を断ち切るように1つため息を付いて俺と向き合う。
「俺はたとえ種族が違っても一緒にいる。だからしょぼくれた顔すんな。ダァホ」
安心して俺と一緒にいやがれ。
そう、日向は照れくさそうに言って抱きしめる。
筋肉がついて硬い胸板、刻まれる心臓の鼓動。
ふわりと香る日向の匂い。
「ん。そうだな」
涙が流れる。
誰かが言っていた禁忌を犯した天使もこんな気持ちだったのかな。
だから、俺は―――
ギィィィ
「おや、珍しいねぇ。天使のお客さんかい?」
「初めまして。貴方に頼みがあります。俺を・・・人間にしてください」
禁忌の箱を開け、俺は赤い果実に銃口を向けた。
(種族を超えてまで愛す、と言ってくれた貴方)
(だけど貴方の死を見届けて生き続けるなんて俺には無理だから)
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