「最初から素直にそう言っておけばいいんだよ」
「うるせっ」
クスクス笑っていると青峰に軽く叩かれた。
ふわりと香るソーダの香りがなんとも食欲をそそる。
俺も腹が減っていないわけじゃない。
ただ言わない、鳴らないだけであって俺も立派な男子中学生だ。
コイツら運動部並ではないが食欲はある。
俺も飴でも食べて気を紛らわすか、そう思ってカバンの中から飴を取り出した。
「あー!ずるいっス!2人だけ飴舐めて!」
包み紙を開けようとした時に隣で女子に囲まれていた黄色い大型犬はキャンキャン吠え始める。
「黄瀬うるさい。お前はお菓子たくさんあるだろうが・・・」
「だってこれは女の子たちのためのお菓子っスもん。それに俺だって真白っちに貰いたいっス!」
「俺にって言ったってただの飴なんだけど」
「いーじゃないっスか。俺にくださいよ?どうせ包み開けるんでしょう?」
確かに言われた通り開けるつもりだった。
だけどお前にやるために開けるわけではない。
が、黄瀬は何かを待ち構えてるように口を大きく開けてこっちを見ている。
「何してるんだ、黄瀬」
「え?真白っちが俺に飴をあーんしてくれるの待ってるんス」
「は?」
「早くー。もう授業始まっちゃうっスよー!」
待ちくたびれた子供のように黄瀬は手足をバタバタさせる。
あーんってお前・・・
俺に何を求めているんだ、黄瀬。
黄瀬が騒ぐものだから教室の視線がこちらへと向かう。
もちろん前の席の青峰も。
こうなってはしょうがない。
こんな事になるなら暴れる前に五月蝿い口を閉ざさせるんだったと心の中で呟き包み紙から飴を取り出し指で掴む。
「黄瀬」
「はいっス!」
「あーん」
あーと黄瀬は口を開け、飴が口の中に入ったことが分かると口を閉じる。
「ん、レモン味っスね」
もごもごと口の中で黄瀬は飴玉を転がす。
背後に花でも散らしているようなそんな錯覚に陥るぐらい黄瀬は上機嫌。
に、対して前の席の青峰は機嫌を損ねていた。
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