不意に、手に温かみを感じた。

人の体温。
紛れもない、彼の体温。


そのまま、ぐいっと強引に引っ張られる。


「っ、えっ、!」


足がもつれて、転びそうになる。

頬に当たる雨粒。ぬかるんだ校庭に無理に連れ出された。


「もー!俺がいるのに考え事すんなよなっ!!ドジっていうけど、最近のお前のほうがドジだかんな黒子!!!」


黒子は、目を見開く。


ぎゅう、と痛いほど握られる手。


繋いだ手はそのままで、彼は走り出した。


「雨に濡れて帰ろうぜっ!傘ないから仕方ないしー!ほらっ走れよ黒子!マネージャーにまけんじゃねえよ!」


ばしゃばしゃ、と水たまりを踏む水無月はすでにドロドロだ。


「ほんとに・・・君は・・・」

「ん?なんか言った?」

「いえ、この人馬鹿だなぁと思いまして。」

「ひっでー!」


想いはきっと、何かのきっかけでもない限り黒子の胸にたまり続けるだろう。
だが、それも彼によって救われる。
いつの間にか、好きになっていた水無月は、いつの間にか泥沼の思考へと陥った黒子をいつも助けてくれた。
その度、更に好きになってしまうのだが。

それでも、想いを告げられなくても、水無月と出会えたこと、水無月と笑えたこと、そしてこうして彼と手をつなげたことが、とても幸せだった。

きっかけをくれた雨に少し感謝をしながら、逆に水無月の手を引いて走ってやる。

すると可愛らしくつまずきながら一緒に走ってくれる。

今は、これでいい。

曇天から垣間見える晴天を仰ぎ、黒子はそう思った。




(ちょ、これが水も滴る良い男ってやつじゃん?・・・っくしゅん!)

(ほら、風邪をひきますから早く帰りましょう。・・・!)



濡れて透けた彼を見て、欲情してしまったのは、また別のおはなし。











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