水無月を見ているとぐるぐると回る思考がいやで、自分が汚く思えて、目をそらす。

ため息として吐き出しても、好きなバニラシェイクを飲んでも、解消されないこの感情は最終的にどこへ行き着くのだろう。

それすら考えたくなかった。

でも、水無月のことを毎日考えずにはいられなかった。


結果、黒子の想いは日常に支障をきたすようになってしまった。


(女子か僕は・・・まったく、嫌になる・・・雨、どうしようか。)



「あれ?黒子?まだ帰ってなかったのー?」


突然、かけられた声。思わず肩がびくぅ!と跳ね上がってしまった。


「そんなにびっくりしなくてもいいじゃん・・・」


水無月はそんな黒子の様子に、すねたように口を尖らせた。
それすらも可愛い、と思ってしまう。

少し考え込んでいましたから、と答えるとそっか、と答えてくれた。
何気ない会話だが、隣に水無月がいるということ、他には誰もいないということが黒子の心拍数を上げていた。

こんなときばかりは自分が表情に乏しくてよかった、と思う。


「ん?何でこんな時間まで?・・・あ、傘がないのか」

「・・・そうなんです、傘がなくてどうやって帰ろうか悩んでいたところです。」

「へぇーそっか。止む気配もなさそうだしなぁ」

困ったな、と到底困っているようには思えない声音で想い人はつぶやく。

「・・・君も、傘を持ってないんですか。」

「俺?持ってないよ。だって今日遅刻して天気予報見れなかったし。」

あはは、と笑って頭をかく。

「ドジですね。(そんな君も好きです。)」


そう、続けられたらどれだけ楽だろう。
どれだけこの想いに素直になれるだろう。

ぐ、と唇を噛み締める。


こんな仕草をしたって、どれだけ思ったって、少しも伝わりもしない。


少し、涙が出てきそうになった、その時。









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