さぁ、と雨が降っている。
無表情で昇降口前に立ち尽くす黒子テツヤは、今日に限って傘を忘れてしまった。



黒子は、朝を思い出す。
今日の降水確率はかなり高かったはずだ。ニュースを見たこともはっきりと覚えている。
傘を持っていきなさい、と母にも言われた。
いつも持参している折りたたみ傘は、今日に限って何故か無い。
誰かに借したのだろうか、覚えてはいない。ただ、傘が無かった。

少女漫画のように、一緒に帰る?なんていう心ときめくありきたりベタベタなワンシーンもあるわけがなく。

自分を残して殆どの生徒は帰路につき、校内は夕闇にのまれつつあった。

はぁ、と何度目かのため息をつく。
まったくもってついていない。


ここ最近、黒子はどこかぼんやりとしていてこのようなドジばっかりしていた。

授業中のノートは誤字だらけ、忘れ物も多々、移動教室のときは反対方向へ歩き出し、大好きなバニラシェイクを注文するつもりがストロベリーにしてしまったり、などなど。

バスケの練習には身が入っているものの、やはりどこかぼんやりとしていて危なっかしい。
火神に心配されるほど最近の黒子の様子はおかしかった。


それもこれも、きっとあのマネージャーのせいだ、と黒子は愚痴る。


新しく男子バスケ部に入ってきた男のマネージャー。年は同じで、一年。自分より身長が低い。仕事の早さに定評があるが、必ずどこかでミスをする。得意な科目は国語、苦手な科目は英語。趣味は読書、好きなことは音楽を聞くことをバスケを見ること・・・そして、黒子を見つけるのが、水無月は得意だった。

と、そこまで思い起こして黒子は思考を無理やり止めた。


(・・・何故僕が水無月のことをこんなに知っているんだ・・・)


はぁ、とまたもやため息をつく。

嫌になる。
水無月のことを意識している自分が。
それによりまわりに迷惑をかけてしまっている自分が。

水無月のせいだ、といっても彼は何も悪くない。
すべて自分が悪い、それは分かってはいるものの。やはりどこか割り切れなかった。

この感情は決して悪いものではない。
しかし、決していいものではないだろう。


―――自分たちは、男だ。


それが、その問題が、その考えが、黒子の想いを秘めたものにする。

これはきっと、恋という感情なのだろう。

彼に触りたい、撫でたい、抱きしめたい、柔らかい唇にくちづけたい、愛し合いたい。

この感情は、異常だ。


想いは、おもりとなって重く重く心を沈ませた。








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