「あ、お礼はいつもどおりほっぺにチューでいいっスからね」
「いつもどおりってやってるような口ぶりしないでください、涼太くん」
頼れ、頼れる・・・うん。
こう言うのが残念なイケメンっていうんだって順平父さんが言ってた。
「煩いのだよ。おは朝が聞こえないのだよ」
「ごめんなさい、真太郎兄」
「ふんっ」
気難しそうな顔をしてコーヒーを飲みながらTV見ているのは真太郎兄。
おは朝っていう番組の占いを見るのが日課。ラッキーアイテムを持ってないと大変なことになっちゃう。
人事を尽くす?らしい。僕にはよくわからないけれど真太郎兄の言う事だから凄い事だと思ってる。
「今日はリコーダーか。燐、今日は音楽の授業はあるか?」
「ううん。ないよ。貸そうか?」
「頼むのだよ」
「あっ!どうせ燐っちの口つける所ペロペロ舐めるんでしょ?もーこれだからむっつりスケベはダメっスねぇ」
「むっつりスケベとはなんなのだよ!そんな事は俺はしない。お前と一緒にしないで欲しいのだよ」
涼太兄が半熟目玉焼きを僕の席に置いて、自分も座る。
真剣にTVを見ていた真太郎兄は顔を真っ赤にして涼太兄を怒っていた。
僕の隣に座ってる順平父さんの新聞を読む手がプルプル震えてる。
あ、これはやばい。そう思った頃は時既に遅し。
「ごちゃごちゃうるせーよダァホ共!静かに飯を食え!飯を!」
「はいっス」
「・・・わかったのだよ」
順平父さんは新聞を机に叩きつけて怒る。そんな様子をリコ母さんはただ笑うだけだった。
テツヤ兄はもくもくと1人ご飯食べてる。僕も食べよーっと。
ウインナーをフォークで刺そうとするとヒョイっとウインナーが宙に舞う。
ウインナーの行方を目で追うと大輝兄の口の中へ消えていった。
僕のタコさんウインナー・・・。
「涼太ぁ〜俺にも飯」
「寝坊助にはないっス!自分で作るか母さんに頼んでください」
「ああ?めんどくせぇって燐なに泣きそうな顔してんだよ」
「だって、僕のタコさんウインナーが・・・」
涼太兄特製のタコさんウインナー楽しみにしてたのに、と今にも泣き出しそうな声で言うと大輝兄はめんどくさそうな声を上げてキッチンへ向かう。
僕はその背中を目で追って、目玉焼きを黙々と食べ始める。
きっと占い12位だったんだろうなぁって思っていたらお皿に歪なタコさんウインナーが2つ置かれた。
ふと上を見上げると大輝兄がフライパンを持って恥ずかしそうにしている。
「アイツみてーに綺麗にできないけどよ。ほらメソメソして飯食うなよ」
「っうん!」
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