「ねえ、征十郎くんが風邪引いたみたいなの。ちょっと歩様子見てきてくれる?」
「は?」
食べていたカレーのスプーンが音を立てて床に落ちた。
征十郎は今東京に帰って来ていて、風邪で寝込んだらしい。ざまぁ。
おばさんとおじさんは今日どうしても外せない用事があって家にはいない。
今日は午前中しか練習がなく暇してた俺に白羽の矢が立ったわけだ。
「嫌だよ。アイツ不死身だから1日ぐらい放ったらかしても死なねーって」
「人でなし!征十郎くんが苦しそうなのにアンタって子は!」
「うわっ。あいつが苦しそうにうなされるかよ」
「つべこべ言わずに行ってきなさい!」
母さんに無理やり家を追い出された。
しかもポカリやらお見舞いのものも持たされて。
これは仕方がないとため息をついて俺は征十郎の家に向かった。
アイツの顔見たら一発殴ろう。
「せいじゅーろー。寝てんのか?」
征十郎の家に行くと鍵が空いていた。
チャイムを鳴らしても誰も来ないから勝手に入る。
別にいいだろ。こんぐらい。
部屋を遠慮がちのノックして中に入る。するとそこには、
「やあ。歩遅かったね」
「え、嘘だろ?」
少し頬が赤らみ、目も熱から来るものなのか潤んでいる。
パジャマに身を包んでベッドに伏せている征十郎がいた。
本当だったのか。コイツ。
「こ、これ母さんから。ポカリとかお粥とかゼリーとか」
「ありがとう。おばさんに礼を伝えてくれ」
少し弱々しい征十郎の声と顔に俺は戸惑う。
ドアを開けてざまぁって指差して笑ってやろうかと思ったのにこれじゃ調子が狂う。
俺はベッドの横、すぐに手が届ける範囲に荷物を置いて何も言わず部屋を出ようとした。
「もう行くのか?」
「風邪、移りたくねーし」
「そうか。残念だな。歩にプレゼントがあったのに」
「えっ何処何処?」
思わずプレゼントという言葉に振り向き部屋を探す。
キョロキョロ見渡していると征十郎は笑った。
そして、自分の手元にあった白い袋を俺に渡す。
「よかったら今着てみて欲しい。サイズとか合ってるかどうか確認したい」
「サイズ?服って事か。征十郎なんだかんだでセンスあるからな・・・」
渡された袋の中に入ってたのはピンクのミニスカナース服。
あ!これ前見てたAVのアオイちゃんの着てたヤツじゃん。
おっぱいでけぇし尚且つ桃尻であの子の騎乗位のシーンは素晴らしかった。
・・・いやそういう問題じゃない。
「誰が着るかぁぁぁぁ!!」
俺はナース服を征十郎の顔面に投げた。
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