水無月が全てを包む優しい母親で高尾が手のかかる息子。

じゃあ自分は差し詰め寡黙な父親という所か。

なるほどしっくりくるのだよと1人納得する。


「真ちゃーん遅いよー!今から玉ねぎの詰め放題あるってー!」

「今行くのだよ」


何処でも恥ずかしくなく声を出せる所とか子供だなとため息をついて緑間はカートを押した。


「あら、燐ちゃん今日は見かけない子ね」

「今日はピンチヒッターで来てもらったんです。いい子達でしょ?」

「燐ちゃんの周りはイケメンだらけで本当に見てて目の肥やしになるわあ〜」


2人はこの買い物の数十分で分かった事がある。

水無月は学校の外でも人気であるという事が。

水無月とすれ違う奥様や中高校生、はたまたおっさんでも振り向き2度見はする。

何度か顔見知りの奥様は気軽に燐ちゃんなんて自分たちでも呼んだ事のない名前で呼び合っているのだ。

肩をバシバシ叩いたりスキンシップまで取っている奥様もいる。

ただでさえ自分たちでもスキンシップを取ってるだけで嫉妬する誠凛寮生が、見知らぬ人たちにスキンシップを取っている所を見させられているこの時間は苦痛なんだろうなと2人は苦笑した。


「そう言えば2人はこうやって寮の買い物とか付き合ってる?」

「なーんも。というか配達に来てもらってるみたいっす。こっち誠凛より人多いんで」

「あ、そうか。誠凛が人数少ないだけだもんね。きっと海常とかも凄いんだろうなぁ」

「しかしこうやって買い物に行く水無月さんも凄いのだよ。寮の仕事沢山あるのに」

「だって皆の笑顔のためだもの。笑顔がみたいから俺が勝手にやってる事なんだ」


じゃなかったら緑間くんたち用にってお重におかず詰めたりしないよ、と笑う。

この時緑間は質問をした自分が愚かだったと思った。

別に自分の所の寮母も素晴らしい人だとは思っている。

体調も気を使ってくれるし、栄養バランスを考えた料理を作ってくれる。

第二の母親のように自分を包んでくれる。

だが、水無月はそれ以上だったのだ。

寮生を想う気持ちも何もかもが。


「水無月さん、大好きなのだよ」


緑間は店の真ん中で水無月を抱きしめる。


「うぇぇっ!?・・・うん。俺も緑間くんの事好きだよ」


水無月は少し驚いたが、手を緑間の腰に回した。


「あー真ちゃんずるい!俺も水無月さんの事大好きだからね!」

「ありがとう、高尾くん。大好きだよ」


高尾も負けじと抱きしめる。

店にいた人々は何アレ天使、と微笑んでいた。









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