「困ったなぁ・・・」
今日は日曜日。
本来は大量買いだしに行く日で、誰かしら手伝ってくれるのだが今日はその誰もいなかった。
なんの偶然か全員が抜け出せない用事があって朝から出払っていた。
昨日の夕方から腰が折れてしまうのではないかと思えるぐらいごめんなさい、と深々と謝る誠凛寮生の姿があった。
強制的な当番でもなく、好意で甘えていた事なので全然いいんだよと水無月は1人1人優しく頭を撫でて見送ったがやはり量を考えて行動するべきだったなぁと大型スーパーで普段通り2つのカートを用意した時に思った。
2つのカートを同時に移動させる事は難しい。
まず、他人の迷惑になるだろうし、今は軽いがどんどん重くなっていくカートを片手で動かすのは難しくなっていくだろう。
これはひと手間になるけど1カートずつ買い物していこうかな、そう思った時に聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれー?水無月さんじゃないっすか?今日は荷物持ちいないの?」
「2つのカート同時押しは流石に辛いのだよ、水無月さん」
「高尾くん、緑間くん。やあ、こんにちは。買い物?」
「ただ喉渇いただけなんで、お茶買っただけです。それよりも今から買い物ですか?大変っすね」
「うん。いつもなら皆がいるんだけど今日は抜けられない用事があるからって」
だから俺1人で買い物なんだとふわりと笑う。
高尾と緑間はお互い顔を見合わせ、コクリと頷く。
そして水無月の両手にあったカートを奪った。
「んじゃ今日は俺らが荷物持ちになりますよ!」
「えええ悪いよ。折角のお休みなのに」
「誠凛の人たちはそのお休みに荷物持ちをしているのだろう?変わらないのだよ」
「ううっ・・・ありがとう。でも助かるよ」
こんなに長い時間一緒に入れる機会を易々逃すものか。
それが2人の本音ではあるが水無月は気づかない。
天候や経済によって少しずつ値上がりした野菜たちを見てうーんと財布の中身と献立とにらめっこをしていた。
「水無月さん、今日パスタ安いってさ!」
「えっ本当?」
「いくつ要ります?」
「うーんと日持ちするし5袋ぐらいお願い」
「うぃーっす」
緑間は1人カートを後ろから押していてふと思った。
まるで家族みたいだと。
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