「珍しいな、大輝が泣くなんて」

「べっつに泣きたくて泣いてるわけじゃねー!」


急に涙が溢れ出てきただけだ。

青峰は自分の拳で涙を拭く。

自分の感情がセーブしきれないのか、涙は溢れ出すまま。

まるで雨が降っているようにパタパタと地面を濡らす。


“大輝は泣き虫だなぁ”


「!?」

「・・・どうした?」


頭の中に聞こえる少年の声。

お前は一体誰だ。何故、俺の名前を呼ぶ。

思い出せ。

何か忘れているはずだ。

こんなにセピア色の風景しか見てきていないわけじゃない。

いつだったか鮮やかな季節を、俺は見てきたはずだ。


「大輝、今日は休んだ方がいい。今日のお前はおかしい」

「ああ・・・おかしいだろうな。だって今俺の耳には赤司以外の声も聞こえる」

「声?」

「中高生ぐらいの男の声がっ俺の頭の中にっ!」


青峰は崩れ落ちる。

その青峰の言葉に赤司は目を見開く。

赤司は崩れる青峰の肩を掴み揺さぶる。


「その声はなんて言っていた大輝!」

「お前は泣き虫だなって、笑ってやがった。まるで俺を知っているような声だった」

「そうか・・・。すまない。揺さぶってしまって」

「全然いい」


赤司は青峰に手を差し出し、隣の椅子に座らせる。

自分のこめかみに手を当てて目を閉じる。


“ねえ、征十郎は俺を救ってくれる?こんな俺と一緒にいてくれる?”

“勿論だ。約束しよう”

“絶対だよ!”










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