思い出せない。

ソコには大切なモノがあったはずなのに。

“何か”が邪魔をする。

後少しで、後少しで思い出せるはずなのに。


「よお、赤司」

「・・・大輝か」

「最近、どうだ?」

「別に。仕事は順調だよ。大輝はどうだい・・・というのは愚問だったな」

「はっ。俺はお前のしおらしくない顔を見たくて帰ってきたわけじゃねーんだけどな」


高校を卒業し、赤司はトップクラスの難関大学へ、青峰は大学進学中単身アメリカへ行きNBAチームへ入団した。

そして赤司はバスケを完全に離れ、1つの会社の社長として経済を動かしていた。

今では背負う者が多くなってしまったためうかうかしてはいられないが、ボーっとしてしまう時がある。

少年の声が頭の中で聞こえるのだ。

征十郎、そう悲しい声が自分の名前を呼ぶ。

彼は一体誰なのか。

そう考え始めたのはいつの頃だったか。


「赤司?」

「いや、なんでもない」


青峰は3年間、大きく見れば6年以上の付き合いのある旧友の見たことのない表情に困惑する。

まるで何かに追い詰められているような顔。

いつだったか誰かが同じ表情をしてたいたような気がする。

誰だろう。

物覚えは悪い方で忘れてしまっているのか。いや、違う。

だって、彼は自分の胸の中で・・・!

彼・・・?


「たい・・・き?お前なんで泣いているんだ?」

「え、あ・・・」


赤司に言われ頬に触れる。

そこには確かに涙があった。









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