水無月の目が好き。
水無月先輩の声が好き。
大好き大好き大好き大好き大好き大好き閉じ込めたいぐらいに大好きどうして気づいてくれないの、ねぇ。
「氷室。お前何してるか分かってる?」
「ええもちろん。先輩を縛って押し倒してるんです」
水無月は氷室の通う学校の先輩に当たる。
バスケ部の主将、岡村のクラスメイトで何度かだけ顔を合わせた事があるだけの間柄。
特別一緒に何かを成し遂げたワケでも、遊びに行ったわけでもない。
会話だって一言二言ぐらいしかした事がない。
そんな男が今、目の前でニコリと微笑んでいる。
目元にあるホクロ色っぽさを増している。
ああこれが女子からの人気のポイントかと水無月は思う。
「俺、先輩の事大好きなんです。なんでも知ってますよ、例えば・・・」
そう言って首元をすっと触れる。
「ひゃっ!?」
ゾクゾクとくるくすぐったさに水無月は思わず声を上げる。
その声に氷室は満足するように口元が弧を描く。
「首が凄い弱いとか。あとは、」
ココとココも弱いんですよね。と横腹や膝の裏に触れる。
誰にも伝えたことのない、ましてやスキンシップをあまりされてた事がないため知らないはずの情報を手にしている氷室が恐ろしいと水無月は思う。
「っこんな事して何が目的だ、氷室」
「目的?それは最初から決まってるんですよ。貴方を僕なしでは生きれないようにメチャクチャにする事」
「メチャク・・・お前自分が何言ってるか分かってんのか!」
水無月は全身を使って暴れだす。
しかし、腕を戒める縄は暴れだす水無月を抑え付けるようにギリギリと食い込み縛りを強くする。
傍から見れば滑稽な姿の水無月の顎を持ち上げそっと口づけをする。
角度を変え、舌をねじ込ませようとしたが水無月は歯を食いしばり舌の侵入を拒む。
仕方がないと鼻を指で掴み呼吸をできないようにする。
「ふっ・・・ぅぅんんん」
酸素を求めて少しだけ開いた所に舌を入れ口の中に隠してあった錠剤を送り込む。
入ってきた異物に水無月は目を見開き抵抗したがもう遅い。
喉の奥までやられた錠剤を出す術はなく嚥下するしか道はなかった。
氷室は喉が動く様子を確認して、ようやく口を離す。
「ハッハッ・・・何しやがった」
「先輩を壊すためのクスリです。まずはその邪魔な理性を取り払ってもらおうと思いまして」
氷室の言葉を水無月が理解するのはそう遅くない未来だった。
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