「っあー!!一発殴らないと気がすまないっス!ちょっといってきます」
「黄瀬ぇ〜。俺も行くわ」
青峰くんは黄瀬くんの意見に賛同し、鞄を近くにいた緑間に投げてコキっと指を鳴らす。
紫原くんも行こうかと考えましたが別に2人に任せればいっかと楽天的に考え新しいまいう棒を食べ始めました。
さきほどアイス食べたばっかですよ。お腹壊します。
青峰くんと黄瀬くんは腕捲りをして声のする方に向かう。
僕もそれに釣られて一緒に向かう。
そこには想像を絶する光景が広がっていました。
「ほーんと日向3Pだけはうめーよなぁー」
「だけってなんだ、だけって」
「水無月、次は俺とチーム組もう」
「おー!あれ、木吉は?」
「木吉は今飲み物買いに行った」
水無月先輩が同じ高校の人だと思われる人たちと3on3をしていました。
けして僕たちのように得意技があるわけでも、何か目立ったものもない先輩のバスケ。
『努力』というものが結晶になったとでも言うべきな少しボロボロのバスケスタイル。
あ、シュート外しました。
「あっ」
「あっじゃねーよ!お前どうしてここ一番は決まらねーんだよ!ダァホ!」
ごめん。ごめん。と笑いながらチームメイトを宥める。
その顔にはぁと眼鏡の人はため息をついて背中を叩く。
中学の時に苦手だー!と言っていたパスも今の人たちにはよく通っている。
くるくる変わる先輩の表情が見ていてとても飽きません。
なによりキラキラと輝く笑顔が印象的で。
「・・・水無月先輩の笑顔なんて初めて見ました」
「当たり前なのだよ。いつも俺らが近くにいる時は俯いていた。むしろあんまり顔をマジマジと見たことすら俺たちはないのだよ」
僕があまりにも遅いため他の3人も公園へ入ってきました。
困惑、興味などといった感情が渦巻いているのが見てわかります。
でも共通している事が1つだけありました。。
「(笑顔すっごく可愛い(なのだよ)(っス!))」
元々たれ目がちだった水無月先輩の目は笑うと余計にトロンと垂れてそこもまた可愛い。
シュートが決まれば喜びギューっとチームメイトに熱く包容を交わす。
失敗すればお互い励ましあう。
先輩は1軍で、ぼくたちともミニゲームなどもしてきましたがそれとはまた変わっていました。
高校で自分の力が開花したのか、中学よりもバスケが楽しいとひしひしと顔やプレイを見れば分かります。
そして何よりも、
「羨ましいっス」
黄瀬くんがポロっと言葉を漏らす。
嫌いだと今まで罵っていた同じ口とは思えないような熱が籠る言葉。
「燐ちんにやったなって抱きしめてもらいたいなぁ」
「僕だって抱き締めてもらいたいです」
黄瀬くんが呟いたことによってでてくる自分達の欲望。
「(僕たちは自ら知ろうとしなかったんだ。水無月先輩の良いところを)」
赤司くんは皆から溢れる欲望を聞いて一人頷く。
それを今気づいた所で時すでに遅し。
水無月先輩もきっと自分達のことを嫌っていて、もう話そうとは思っていないでしょう。
自業自得だなと赤司くんは苦笑する。
「ん?赤司?」
「先輩・・・」
水無月先輩はチームメイトに言われて振り向き僕たちに気がつきました。
どことなく挙動不審がっているぼくたちの元へと向かう。
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