行かないで。

震える唇で伝える。

伝えたと同時に涙が溢れ出てきてそのまま流されるように自分の気持ちも出てくる。

嗚咽で言葉にならない所も征はじっと黙って聞いていた。

気持ちも涙も全部出切った後、征は俺を抱きしめた。


「せっ征!?」

「バカ。なんでもっと早く言わないんだ・・・僕も愛しているよ、歩」


俺が一番聞きたかった言葉を征はそっと呟く。

燐がその口で喋ってくれる事を僕はずっとずっと待ってたんだよと征は言って俺の口を征の口で塞ぐ。


「ん・・・ふっ」


久々の征の匂い、ぬくもり。

俺はまた涙を流した。


「止まったかい?」

「ん・・・ごめんね。征の服涙で汚しちゃった」


征は俺が泣き止むまでずっと胸を貸してくれた。

全然いいよと征は俺の手を握り締める。

今日1日で俺の一生分の涙でたんじゃないかと思えるほど泣き続けた。


「ここまで思いつめてただなんて知らなくてすまない」

「ううん。俺が何も言わなかったのも悪いしいいよ」


その後征の口から京都に行く事になった経由を聞いた。

それを聞いて俺はもっと早くに伝えればよかったと後悔もした。


「燐愛してる。これからも一緒に帰ろう」

「うん・・・俺も。だって、」


右(左)側が淋しいんだ。



「征ー!そろそろ時間だよ」

「分かってる。あ、燐ネクタイ忘れてる」

「へっ?」

「全く。そっかしいなぁ・・・」


白から灰色のブレザーに変わった俺たちは新しい環境で新しい1歩を踏み出す。

右側には征がいて、左側には俺がいる。

手を繋いで部屋を飛び出した。



(そういえばいつの間に立ち位置って決まってたんだけ)

(そんな昔の事忘れちゃったさ。それより遅れるよ)

(げっもうこんな時間?)



新婦の右側は新郎の場所、だなんてね。




あとがき

海月様リクの赤司夢で決定的な何か(言葉)が欲しい主とそんな主の本音を引き出したい赤司です。

他力本願というかただの口下手みたいになっちゃいましたね、申し訳ないです。

赤司もいつものあの王者っぷりはログアウトしてただの中学生へジョブチェンジ。

黄瀬は2人の両片想いに気づいていて、早くくっつけばいいのにってずっと思ってました。

まさかのキューピット役になるとは思わなかったでしょう。

帰る時の立ち位置はもちろん赤司の策略です。

いつ結婚式やってもいいようにさりげなく刷り込ませておくのです。

苦情は海月様のみ受け付けます。

リクエストありがとうございました!









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