水無月 Side


「最近元気ないっスね」

「・・・黄瀬か」


あの日から俺たちはバラバラに帰っている。

俺の右側には誰もいない。

左側には今日、黄瀬がいた。


「赤司っちも元気ないんスよねー。喧嘩でもしました?」

「喧嘩はしてないけど、」

「けど?」

「高校で、離れ離れになるって聞いて、悲しくて、悲しくてしょうがないんだ・・・」

「水無月っち・・・」


好きだから行かないでって、ずっと傍にいてって言えたらどんなに楽だろう。

だけど俺はその伝え方を知らない。

生きてきて15年。俺は伝えてこなかった。自分で自分の思いを。

征がいてくれて、征が僕の思いを引き出してしか伝えてこなかった。

でも征は桜が咲く頃にはいなくなる。

俺の胸は張り裂けそうだった。伝えたい征への思いで一杯だった。

黄瀬は何も言わずに俺の胸にそっと手を当てる。

そのままゆっくりと撫でる。


「水無月っちの思ったように行動すればいいんスよ。周りなんて気にしないでさ。もし周りがなんか言ったら俺と青峰っちでぶっ殺すんで」

「ハハッそりゃ頼もしい・・・ありがと、黄瀬」

「ぜーんぜん!水無月っちと赤司っちが元気ない方が寂しいっス」


だから早く行ってあげて。そう黄瀬は俺の背中を押す。

胸の中の枷が外れる音が聞こえた。

俺は黄瀬にありがとうと行って征の家へと走る。

チャイムを鳴らしてドアを開けたのは征だった。


「燐・・・」

「・・・話しに来たんだけど今いい?」

「どうぞ」


久々に入った征の部屋。

1週間に1度は入っているのに1年も入ってない気持ちになる。

征は温かいコーヒーを俺専用のカップに入れて持ってきた。

そのコーヒーを一口飲んで気持ちを落ち着かせ征の方を向く。


「俺、征・・・ううん。征十郎の事が好きなんだ・・・大好きなんだ。だから」









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