赤司 Side


僕の幼馴染はテツヤ並みにポーカーフェイスだ。

でも仕草でその時の感情が読み取れる。

喜んでいる時はピコピコと腕をよく振り、怒る時は腕を組む。

哀しい時は両手を握り締め、楽しい時は口に手を持っていく。

だけどそれを知っているのは僕だけ。

よく一緒に帰る大輝たちにも分からない僕だけの特権。


「それじゃあね。また明日」

「うん。バイバイ。おやすみ」

「おやすみ」


僕が家に入ってから燐は家に入る。

それまでじっとこっちを見ている。

部屋に行けば窓の向こうで様子を伺ってる燐の姿が見える。


燐はとても奥手だ。

奥手、というか他力本願な所が大きい。

だからきっと燐は僕が窓を開けないかなとか思っているんだろう。

だけど、僕は開けない。

本当は開けて話をしたい。

もっと笑っていたいと思っているがそれをしてしまうと僕も燐もダメになってしまう。

だからせめて、僕は燐の口から気持ちを聞きたい。

態度では痛いほど僕に伝わっているからその口で、僕に伝えて欲しい。

そんな状態がもう3年近く続き、ある転機が起きた。


「なあ赤司。お前に京都の洛山という学校から推薦が来ているんだ」

「・・・その話もっと詳しく教えてください」


僕は1つの賭けに出てみる事にした。

イチかバチかの大勝負。

失敗したらもしかしたらもう僕たちは・・・。



ある日の帰り道僕は燐に進学先を聞いた。


「俺征と一緒の学校でいいよ」


きっと決定事項のように燐の中で決まっている事。

俺は態と立ち止まる。

燐は不安そうにこっちを見てくる。

そして俺は伝えた。一緒の学校には行けないだろうと。

するとどうだろう。

今まで怒られても、殴られてもグラリとも変えない程のポーカーフェイスが歪みに歪んだ。

悲しみと怒りと驚きが混ざったような瞳。

眉はハの字に歪み、きゅっと下唇を噛み締めている。


「燐・・・すまない」


勝手に決めてごめん。

そんな悲しそうな顔をさせてごめん。

2重の意味を込めて行ってそのまま僕は1人で帰った。

僕たちは初めてバラバラで帰った。

ぽっかりと僕の左側が空いていて、でも僕の心臓はきゅっと締め付けられていて。


「すまない・・・すまない・・・」


僕は一粒の涙を流した。









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