「真白」
「赤司・・・」
WCが始まった日。
久々にキセキの面々が集まった日。
俺は赤司に試合が終わったら残ってるように言われた。
カントクに一言言って先に帰ってもらうように伝える。
黒子は何か言いたそうにしながら火神に押されるように帰っていく。
また明日にでも説明するかとため息をつくと赤司がジャージの姿で立っていた。
「ほらまた眉間のシワ寄せて。跡になるだろ」
「これは癖だって何度言えば分かる」
そうだったねと笑いながら俺の眉間に触れる。
触れた手は冷たかった。
「さ、行こうか」
「どこへ行く気だ?」
「いい所さ」
ちゃっかり手を握られて赤司の一歩後ろを歩く。
お互いに一言も喋る事なく黙々と歩いていく。
さあ着いたよ。と言われて連れてこられたのはいい意味でも悪い意味でも思い出がある母校だった。
フェンスをよじ登り、学校の敷地内に入っていく。
赤司は何処から持ってきたのか学校の鍵を使って扉を開ける。
少しだけ埃っぽく独特な匂い。
下駄箱を見て歩くと赤司はある場所で止まる。
「確かここだっけか。真白の下駄箱」
「ああ。よく手紙が入ってたよ。喧嘩のお誘いがな」
「ふふ。最初出会った頃なんか警戒心むき出しの猫だったね。まあ今でも気まぐれな猫だけれど」
「うるせぇ。猫じゃない」
「ああ。ネコか」
「下ネタやめろ、赤司」
黄瀬と青峰と笑いあった教室、紫原とお菓子の奪い合いをした廊下、黒子とよく会った図書室。
緑間のピアノを聞いていた音楽室、灰崎といた中庭。
そして、無理やり連れてこられてバスケをしていた体育館。
コイツらと出会った1年と少しは今までの人生の中で濃密だった。
きっとこれからもその1年と少しの間は忘れる事はない。
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