ボクは影だ。同じバスケ部の黒子テツヤはそう言った。第一印象は影の薄い少年。でもそのプレイを見た瞬間に俺は思ったんだ

―――

「あれ、黒子?」

「こんにちは、燐君」

合宿に来ていた俺達は同じ部屋で寝ていた。黒子の頭は案の定爆発していて、いつも触りたくなってしまう

「お前の頭ホントどうなってんだよ?」

「わ、頭撫でないでくださいよ」

俺より幾分か低いところにある頭をぐしゃぐしゃ撫でると、不服そうに目が細められた
表情の変化がわかるようになってきて嬉しい、火神にはわからないらしいから少し優越感を感じた。黒子を見失うことも無くなった俺はよく黒子に話しかけて火神を驚かせるのが楽しかった

「…燐君は、ボクのことよく子供扱いしますよね」

「ふは!だって黒子可愛いんだよ!」

「嬉しくないです」

むすり、と膨れる黒子の頬をぷすと差して笑った。やっぱり可愛い

「よー、燐」

「おはよ、火神」

「おはようございます、火神くん」

「うぉお!!黒子!いたのかお前!」

もう結構長い間一緒にいるのにこの驚きようだ。いつも笑ってしまう
そこから火神をからかうと顔を赤くして反論してくるのが楽しい。そんな俺達を見る黒子が寂しそうな目をしていたのに気づかなかった

―――

夜、隣に寝ている筈の黒子がいないのに気がついて外に行く。近くのストバスに行くと、案の定いた。あれだけカントクにしぼられたと言うのに、黒子はひたすら、シュートを打っていた

「相変わらずへったくそだな」

「…燐君」

少し驚いたような黒子はすぐに下を向いた。こういう時の黒子は何か思いつめてる証拠だ

「何、考えてんだ黒子?」

「…燐君は、火神君のような人の方がいいですよね」

寂しそうな声、というよりもいじけている子供みたいだ
黒子の言い分はこうだ。俺が火神のように華やかなプレイをする人間の方が好きだと思ったから、だからそれに近づこうと練習をしに来たと

「…でも、ボクには無理でした」

苦笑する黒子はいつもより落ち込んで見えた

「あんな風には、輝けない、ボクは影だから」

「なに言ってんだよ、俺は黒子のプレイ好きだぜ?」

きょとんと目を丸くさせる黒子がまた可愛い。言ったら拗ねるだろうから割愛させて頂く
ふわふわの髪を撫でながら言った

「俺からみたらお前も十分、きらきらしてるよ」

微笑みながら言えば黒子は目を真ん丸に見開いたあと、嬉しそうにはにかんだ

俺から見れば黒子も優しい光。

俺の憧れなんだ

「燐君」

「どうし…んむ!」

ふにっとした感触が唇に触れた。目の前には目を閉じた黒子がいて
唇を離したあと悪戯っぽく笑った

「大好きです、燐君」

「……っ」

俺もだよ
呟いた声は聞こえていたかどうかわからない
でも黒子は笑っていたからきっと伝わったんだろう


その日、合宿先の民宿では手を繋いで眠る俺達の姿が多々見られて、先輩達に茶化されて真っ赤になった火神におめでとうと言われたのは別のお話









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