見つめる先は灰色/灰崎


灰崎祥吾は今柄にもなく戸惑っている。

真向かいの店には前部活に入ってた時の元チームメイトがいる。

ただそれだけで灰崎は戸惑ったりはしない。

理由はまだこれで全てではなかった。


「祥吾?何してんだ?」

「なんでもねぇよ。ほらさっさと決めちまえ」

「決めかねてるからこうやって祥吾と来てんじゃんか」


ぶーと口を尖らせながら服を選ぶ燐。

燐は元チームメイトに大事にされている部活の部員。

特に主将の赤い中二病・・・赤司は大事を通り過ぎて過保護まで行っていた。

そんな大事な人を横からかっさらっていったのが隣にいる灰崎で。

2人は俗に言う恋人関係なのだがその関係を知る人は誰もいない。

だからこそ恐ろしいのだ。いつ、彼らにバレるのかと。


「あ、これ祥吾に似合いそう!」


似合う似合う〜と灰崎の首元に当てるのはダークグレーのマフラー。

嬉しそうに飛び跳ねるのはいいが今日の目的を本人は忘れているようで。

灰崎は一つ心の中でため息を付いて、そこらへんにあったクリーム色のマフラーを燐の首元に当てる。


「今日は俺の服じゃなくて、お前の服を見に来たんだろ?これとか似合うんじゃないのか?」

「んー俺に白っぽいの似合うかなぁ〜」

「似合う似合う。むしろ今も白着てんじゃねーか」


今の燐の格好はジーパンに灰色のタンクトップ、上に白のニット。

そして首元には灰崎が誕生日に送った指輪をチェーンを通してネックレスにしているのが光っている。

本当は指にしてもらいたいが、指にすると皆が煩いんだと先日燐が苦笑しながら言っていたのを思い出す。

チラっと真向かいの店を見ると未だにチームメイトたちの姿がある。

が、こちらには気づいていない。

燐もあっちの存在に気づいていないようだ。

それでいい。むしろそのまま時が過ぎろと灰崎は心の中で呟く。

しかし現実はそう甘くはなかった。


「おーい!大ちゃーん!」

「げっさつき。なんでいんだよ」


部活のマネージャーの桃井さつきが現れたのだ。

彼女は可愛いだけではなく頭がキレる。

情報処理はきっと日本のマネージャーの中で右に出るものはいないであろう。

そんな彼女が現れたのだ。

嫌な予感が灰崎の脳裏によぎり、燐を店の奥の方へ行かせる。


「ん?どうしたんだよ。祥吾」

「いいんだよ。こっちにお前に似合いそうな服があったからな」

「えっどれどれ?」









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