今日は目の前でチューチュー嬉しそうにバニラシェイクを飲んでいる後輩の誕生日。
普段はポーカーフェイスで表情がよく分からないがこの時はどことなく嬉しそうな顔をしている。
よほど美味しいんだろう。
じーっと見てると人間観察が好きな黒子はすぐに気づきずずいっとこっちにバニラシェイクを向けてきた。
「先輩飲みますか?」
「いーよ。俺甘いの嫌いだし」
そう。俺は甘いものが苦手だ。
特にバニラが。
ふわりと香る甘ったるい匂いがダメ。
それを飲んでいる黒子は超人じゃないかと思う事がある。
それにこれは俺が黒子に誕生日プレゼントと奢ったものだから貰うのはおかしい。
黒子は美味しいのにと小さく呟きまたチューチューと飲んでいく。
本人には言わないがシェイクを飲んでいる黒子の姿を見るのが好きだ。
普段何考えているか分からないコイツの表情が簡単に揺らぐ瞬間で、それをマジマジと見れるのはこの時しかない。
じょ、情事の時もギラギラとした肉食獣のような目だけどその時は俺の頭が一杯一杯のため表情なんて見てられない。
「僕も流石にずっと見られてると飲みづらいのですが」
「っああ。すまん」
黒子はテーブルにシェイクを置き、無造作にテーブルに置いてある俺の手を触る。
冷たいシェイクを持っていた黒子の手はヒヤリとして冷たい。
俺は思わず眉をひそめる。
「すみません。冷たかったですか?」
「ちょっと、な。それで黒子手離してくれるか?ここ何処だか分かるだろ」
「ええ。マジパですね。大丈夫ですよ。ここはあまり人目につかない場所なので」
まるで謀っていたかのような口ぶりに俺は呆気にとられる。
そうだった。コイツはそんなヤツだった。
人畜無害な子羊かと思いきや獰猛な狼だったと知らされたのはまだ日が浅い話。
野郎の手をもんで何が楽しいのかは知らないがずっと俺の右手を触っていた。
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