朝目覚めて何気なしにカレンダーに目を向けると、今日の日付に赤いボールペンで丸がしてあった。
「あっ・・・忘れてた」
部活や新しい環境ですっかり忘れていた事。
そう。今日は後輩であり、恋人の赤司の誕生日だった。
いきなり部室に呼び出されたのは卒業式の事。
何言われるんだとビクビクしながら部室へ言って女子が噂していた壁ドンをされながら言われたのはまさかの愛の告白。
いつも余裕な顔しか見てこなかった我が主将サマの貴重な赤面シーン。
まさか絶対王政の暴君はホモだったなんて心の中で思いつつ、ヤツの告白になんも嫌悪も持たなかった俺はすんなりOK。
クールであまり感情的にならない男が狼になった瞬間を見たのはその次の瞬間。
1つ年が違うだけ。
まあ、中学と高校と舞台が違うだけでここまで逢えない日が多くなるなんて思いにもよらなかったが。
別に忘れてた言い訳をいい述べた訳じゃない。
だけど、最近全く逢えていないから寂しいと言えば寂しかった。
その寂しさをはぐらかすように首を振って部活の朝練に行く。
早く行かないとカントクに怒られる。
朝練が終わった着替えの途中。
赤司に何をやろうかと必死に考えていた。
「はぁ・・・」
「どうしたんだー。水無月らしくないぞー?」
「コガか。なあ、お前弟とかいたっけか?」
「姉貴しかいない!んじゃ兄弟の多い水戸部にも聞くか。おーい水戸部ー!」
「・・・?」
水戸部は既に着替え終わっていて、コガの言葉に水戸部は気づき傍に寄ってくる。
「なあ水戸部!水無月が珍しく悩んでるんだ。聞いてやってくれよ」
「・・・」
「なんでコガ上から目線なんだよ・・・まあいいや。水戸部中学生が欲しがる物とかしらないか?中3なんだけど」
「おっもしかして彼女?年下の!?」
「黙れっコガ!」
「・・・・・・」
ふんふんとコガは聞き耳を立てる。
いつ見ても不思議な光景だ。
口も何も開いていないのにコガだけが水戸部の言葉を理解できる。
俺も、アイツの事を分かる事ができたらいいのに。
「あの年頃は直接聞いて一緒に買いに行った方がいいってさ。欲しい物でも色違いってだけで怒られるときもあるからって」
「・・・なるほどな。確かに思春期だもんなー。俺らもだけど」
「どうやら妹ちゃんに怒られちゃったらしいぜ。水戸部の妹ちゃんを思う気持ちで買ってきたのになぁ〜」
ポンポンとコガは水戸部の大きな背中を叩く。
ありがとうと2人に伝えて、俺はまた1人悩むのだった。
直接聞いてか。久々に母校にでも行くか。
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