ゴーンゴーン


協会の鐘がなる。

子供たちがバタバタと教会の中へ入っていった。


「神父さまー今日のお話はなに?」

「この前のお話はつまらなかったから面白いのにしてよな!」

「面白いのよりもロマンティックな方がいいわ」


子供たちは神父を囲むように座る。

今日は神父による読み聞かせの日だ。

子供たちはその時にくれるお菓子と神父の話が楽しみで我先にと手を伸ばす。

神父はそんな子供たちの様子を見てクスクスと笑いながら1枚のクッキーと暖かいココアを渡していく。


「そうですね・・・今日はリコさんのご要望にお答えしましょうか」


神父がそう言うと少年からはえぇーという詰まらなさそうな声が、少女からは期待に胸を膨らませる声が発せられる。


「どんな話ですか?」

「少し、悲しい恋の物語です」


少女は待ちきれず神父に問う。神父は答えふと十字架を見上げた。






「待つのだよ」

「え?」

「これ・・・落ちたのだよ」


黒い髪の青年、燐は買い物に出かけていた。

男にしては長い肩までの髪を揺らし道を歩く。

あまり外に出ない彼は1度の買い物で大量に買い込む。

袋がはち切れそうなほどパンパンに詰め込まれ、重そうに抱えている。

いつ袋が破けてもおかしくない状態だった。

きっとそのせいで落ちてしまったのだろう。


「あ、ありがとうございました」

「ふん。どうってことはない。にしても買い込み過ぎではないか?計画性がなさそうなのだよ」

「これはちゃんと計画してますよ。俺あんまり外出たくないから」

「不健康だな。だからこんなに細いのか」

「なっちゃんと食べてますっ!」


拾ってくれた親切な青年は真太郎と名乗った。

あまり外の様子を知らない燐でもわかる一国の王子の名前。

それが彼だった。






 




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