指を挟むように揉んだり、手のひらを指でふにふにと押したり何をしたいのかは分からない。
が、その行動がどんどんと自分の体に毒になっていくのは分かる。
まるで情事の時のようなグズグズとした感覚が腰のあたりに襲う。
これ以上いくとまずい。
本能が危険信号を点滅させ、もう片方の手で黒子の手をやめさせようとした。
「大丈夫ですよ、燐先輩」
「何がだ。ちゃんと説明しろよ・・・っ」
もう片方の手も簡単に黒子の手に捕まり、手の甲にチュっとキスを落とす。
「くっくっ黒子ぉぉぉ!?」
「騒がないでください。見つかって恥ずかしい思いをするのは先輩の方ですよ」
ほらと辺りを見渡すと周りの客はこっち、というか俺の方をじっと見てくる。
そういえばこいつは影が薄かったんだった。と改めて再認識させられる。
つまり周りの客には俺が1人で騒いでいる痛いヤツとしか映っていない。
俺の目の前にはしてやったりと言った可愛くない顔をした男がいるというのに。
コホンと俺は1つ咳払いをして座りなおす。
勿論手は膝に片付けた。また同じような事があったら困る。
黒子は残念そうな顔をしてまたシェイクを飲み始めた。
はぁ、と俺は1つため息をついて外の様子を見る。
大寒を迎えそろそろ立春。しかし春にはまだまだほど遠い寒さに憂鬱感が襲う。
「燐先輩」
「あ?なんだよっ・・・ふっ、ん・・・」
ぐっと胸元を引っ張られたと思えば唇に当たる柔らかいもの。
いきなりの事で口が開きっぱなしになっていて、舌の侵入を簡単に許した。
黒子の口から俺の口へ口移しで渡されるバニラの香り。
体温まで温められたぬるいソレは甘さを増し俺の頭を麻痺させる。
「っはぁ・・・黒子何すんだよ」
「おっそわけです。物欲しそうに見てた先輩へ」
「そんなもん欲しくない。俺が嫌いな事知っててこんな事して・・・」
コーヒーで流し込んでも消えない口の中の甘ったるさ。
むしろ余計に甘さを際立ててるような錯覚さえ陥る。
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