「そう言えば今日花宮の誕生日だったっけか・・・?」
思い出したのは5限目が終わった休み時間。
残されたタイムリミットはあと1時間。
ダメ元で購買に行くかと財布を持って行ってみるが、まあ結果は分かってはいた。
「そりゃねーよな。カカオ100%チョコなんてよ」
我が儘気ままな我が主将兼監督の好物はチョコ。
ただのチョコじゃない。カカオ100%のだ。
最近コンビニでも75%までしか見た事がないレアものがこんな小さな購買にあるわけがない。
はぁ、とため息をつく。
そしてハタと考える。
何故俺はアイツのために悩まなければいけないのかと。
むしろこれをいい機会に今までの鬱憤を晴らしてやろうか。
「おばちゃん!このチョコ頂戴!」
「あいよ。80円ね」
1枚のミルクチョコ板を買って家庭科室へと向かう。
運が良く誰もいないので、さっそく調理を始めた。
「これ溶かして固めるだけじゃすぐわかるから、コーヒーの粉末いれたら苦くなるかな?それとコイツをいれよう。けけけっ」
コーヒーの粉末などを入れたなんとも言えないチョコが完成した。
バレちゃいけないと丸めてココアつけてトリュフ風に。
ラッピングとかそんなものはないのでラップで包むのだけは許していただきたい。
これで勝てるとガッツポーズをし、意気揚々と部活へと向かった。
部室へ行くと花宮が既にいた。
周りには誰もいない。チャンス!
「なあ、花宮。誕生日おめでと」
「ん?ああ・・・そうか。今日俺誕生日か」
花宮も忘れてたらしい。
まあそれはさておきさっき作り上げた力作という名のチョコを花宮に渡す。
「これ。俺作ったんだ」
「お前が俺に手作り?ありがとうよ」
これがあの悪名高い花宮か?と疑いたくなる程素直に受け取る花宮に俺は驚く。
今食えよと促す。
花宮はその言葉に頷き、チョコがくるんであるラップを取り外し指でチョコを掴み口の中に入れようとした。
さあ!食え!そして欲に乱れるお前を俺に見せろ!
腹抱えて笑ってやるから!
「ふはっこんなんで俺をハメようなんて100万年早いんだよ、バァカ」
「んぐぅっ!?」
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