「あ、んで何がいい?バイトもしてねーし対したものは買えないけど」

「別にいいよ。こうやって燐に逢えただけで僕は満足だ」

「お前なぁ〜。折角俺が来てやったのに。それに、」

「それに?」


だってお前春には京都に行っちゃうじゃん。

その言葉は喉の奥で留まらせた。

寂しいなんて言ってはいけない気がして。

俺はただの寂しがり屋の1年早く生を受けただけの形だけの先輩で、

アイツは大きな物を背負って堂々としている後輩で、

後輩の門出を祝えない先輩なんてカッコ悪くて。

胸の中でさっきの言葉がモヤモヤ渦巻く。

赤司は俺の何とも言えない顔を見てクスリと笑い、そっと唇にキスをする。


「何くだらない事悩んでるんだ、燐」

「うっせ。黙れ赤司」

「全く。子供はどっちなんだか」


さっきよりも長いキスが俺に降り注ぐ。

口の中に熱い赤司の舌が入ってきて俺の舌と絡み合い、飲み込めない唾液がつぅっと口角からこぼれ落ちる。

久々の感覚で俺の膝は既にガクガクで赤司に支えてもらわなければ俺は自力で立つ事がままならなかった。


「っん・・・ふぁ」

「っは。キスやっぱり下手だね」

「黙れよ。最後にしたのいつだと思ってんだよ」

「確か全中終わったその日だったかな?あの時は可愛かったよ。僕の上で喘いでくれて」

「あーあー!そんな事まで思い出すな恥ずかしい!」


きっと今の俺の顔は真っ赤だろう。

パタパタと手で熱くなった顔を仰ぎ、キッと赤司の方を見る。


「そんなに悩むなら一緒においでよ。僕と一緒にバスケしよう」

「・・・それは無理。アイツらを裏切る事はできない」

「だろうと思ったよ。燐分かるかい。燐が寂しいと思えば同じ分だけ寂しいし、燐が嫉妬するだけ僕も嫉妬するんだ」

「っ赤司・・・」

「ね?僕は主将である前に1人の男、雄だ。今の状態は・・・?」

「続きはお前の家でな。ここだと自主練で帰ってくる部員がいる」

「わかったよ」


急いで片付ける赤司を横目に俺は今年の全中の集合写真を見る。

そこには笑顔だけと笑顔ではない後輩たちの写真が飾ってあった。


「何写真見てるの?帰るよ」

「おー。赤司、優しくしろな」

「どうしようかな。こんなに可愛い燐見てたら我慢できそうにないな」

「明日も朝練あるんだよ。ばーか」


今の赤司の顔は主将でもキセキの王様でもなんでもない1人の赤司征十郎の顔だった。

俺はそんな赤司の顔を見て腹をくくり赤司を呼び止める。

腕を強引に引っ張り赤司の頬に軽く触れるだけのキスをする。


「燐・・・」

「ハッピーバースディ、赤司」


誕生日プレゼントは後日お揃いのネックレスを買った。

赤司曰く首輪だそうだ。

なんて可愛らしい束縛なんだと笑いながら俺は毎日つけている。




(大きな物を背負っている小さな背中が俺は好きだ)

(そんな僕を抱きしめてくれる燐が僕は好きだ)




だからこそ支え合い生きていく




 




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