真太郎は水無月の家を出て早足で王宮へ向かう。
少し長く居すぎた。
王が怒ってしまう。
「王子。ちょっといいですか」
「・・・っなんだ。黒子か。どうしたのだよ」
「いえ。ちょっと確認したいことがありまして」
急いでいた時に呼び止められ振り向いたら水色の髪の少年、テツヤがいた。
テツヤは真太郎を路地裏まで来てもらい1つ言葉を発す。
「王子は彼の事愛しているのですか?」
「当たり前なのだよ。お前は王に呼ばれて調査していたのか?無駄だぞ。例え王が処刑を命じても俺がさせん」
「半分正解ですが半分は不正解です。王子よ。貴方は魔女にたぶらかされています」
「何?どういう事なのだよ。詳しく話せ」
「燐と呼ばれる青年は魔女です。王子はたぶらかされているのです」
「そんな訳がないのだよ!俺はっ俺たちは愛し合っている。だからたぶらかす、たぶらかされるなど関係ない」
真太郎は叫ぶ。
あまり声を荒げる事のない彼の叫び声。
テツヤは内心驚いているが同時に哀れに思った。
「・・・その愛さえ魔術と呼んでいるのであれば?」
テツヤの一言が真太郎の中で何かが砕けた。
ああ・・・なんておぞましい。
魔女め。
俺をたぶらかしていたのか。
魔術で俺の体を、心を、全て弄んでいたというのかっ!
コンコン
「はい・・・ってどうしたの、真太郎。今日来る日じゃないよね?」
「話があるのだよ。広場に来い」
「・・・うん」
次の日真太郎は燐のところへ訪れた。
昨日までとは違う面持ちで。
そこには愛などはなく憎悪しか持ち合わせていなかった。
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