雨の降る夕方。

学校から自宅へと帰るまでに通る繁華街。

水たまりがそこらじゅうにできていてズボンの裾は雨で濡れて重い。

明日は土曜で学校は休み。

日曜日も使って何をしようか、あれこれ考えながら帰り道を歩いていた。


「みぃ」

「ん?」


力のない声が聞こえる。

声のする方向。そこには隅っこに追いやられているダンボール。

ダンボールを開けてみると、


「げっ・・・マジ?」


種類がバラバラな6匹の子猫がお互いの体を重ね暖め合っていた。

ダンボールには典型的な『拾ってください』の文字。

幸い屋根があって直接体に雨が当たることはないようだが今は極寒の冬。

見る限り乳離れしてるかしてないかぐらいの子猫が1匹で生きていけるほど優しい季節ではない。

俺は頭をぐしゃぐしゃにしながら1つの決断をする。


「連れて帰るか」


ダンボールをそのまま抱え、家の近くにある師匠の病院へと向かった。





「まあこんで大丈夫やろ。燐が見つけるの早かったようやし衰弱してないわ」

「さっすが今吉師匠!恩に着ます」

「恩はええからあの子たちに会いに行ってき。みぃみぃ泣いとるわ」

「うぃーっす」


家の近くにある今吉動物病院。

小さい時から動物が好きだった俺は先代の先生の頃から遊びに行っていた。

俺が獣医を目指したのも先代の先生と今吉師匠に憧れてだ。

一気に野良子猫6匹見てください!なんてきっとどこの病院でも断られるだろう。

だけどここなら見てくれる。安心して連れてこれる。

それだけ今吉師匠は動物を愛している証拠で、俺からの信頼の現れ。

師匠に言われて診察室に入ると6匹の子猫は診察台の上でうろちょろ歩いていた。


「よし。ここまで回復してるならええわ。一緒に帰ったり」

「はい!ありがとうございました。師匠!お代はいつもので?」

「もちろん。にしても今日はぎょうさんおったしそれに追加で酒のつまみでも作ってもらおうか」

「了解っす」












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