「よぉ。お前見たことないな」

「・・・そうだな」


7月。初夏の暑さでじわりと汗が制服のシャツを湿らすこの季節。

クラス内では席替えで気持ちが浮き足たっていた。

そして決まった席の前にいる青い髪のガングロ・・・青峰は俺の方に体を向けそう言った。

あまり社交的ではなく滅多にクラスメイトとは話さない俺はいてもいないような存在で、反対にこの男は1つのムードメーカーとも呼べる男だった。


「なあ、お前名前なんてーの?」

「久遠。久遠真白」


青峰は久遠な、とそう呟きニカっと笑う。


「あー!青峰っち斜め前じゃないっスか!」

「よお、黄瀬。またうるせーのが来たなぁ」


隣にはモデルで有名な黄瀬。周りの女子はキャアキャアと黄色い声をあげる。

ただでさえ黄瀬と遠かった前の席でさえうんざりするほどの女子の声を聞いてきたのに間近にこられるとウンザリする。

はぁ、と1つため息をつくとじっと見られる視線に気づいた。


「何だ?」


視線の先には黄瀬。


「えっいやただ見たことない顔だったんで・・・よければ名前を教えてくださいっス!」

「こいつにも教えたが俺は久遠真白」

「久遠ですね。俺は黄瀬涼太っス。にしてもクラス替えして3ヶ月は経つのに俺久遠の事見たことないような気もするんスけど」


黒子っちみたいに影薄いんスか?と黄瀬は言う。

黄瀬の言うクロコッチという人物は俺には分からないが、あまりに失礼な質問に俺は自然と眉間に皺を寄せてしまう。

周囲から怒ってるように見えると言われるその顔を黄瀬は見てごめんなさい、と謝る。

別に怒ってるわけでもない。ただそんな顔なだけであって。


「おー黄瀬。今日の体育バスケだとよー。早く来いよ」

「えっマジっスか?すぐ着替えるから待ってくださいー!」


嫌な空気が漂っていた俺と黄瀬の空間は青峰の一言で跡形もなく消えた。

黄瀬はマッハで体操着へと着替えて青峰の待つ廊下へと向かう。


「・・・着替えるか」


授業まであと5分。俺もシャツのボタンに指をかけ着替え始めた。






 




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