「動物に触れるべからず。おは朝は絶対なのだよ・・・」
「むしろそれはお前が鹿をバカにしてるのが悪いと思う」
「久遠の言う通りっスよ」
鹿と緑間のせいで遅れてしまった俺たちは駆け足でクラスメイトたちの後を追う。
思ったより離されてなくて数分走ったら見覚えのある制服の集団を見つけて安堵した。
大仏殿の正門にあたる南大門をくぐる。
そこには阿形吽形の金剛力士像が両側に1体ずつ飾られてあった。
「ひえーでかいし勇ましいっスねぇ」
「やはり教科書で見るよりも迫力あるのだよ」
「そうだね。っとそろそろまた離されそうだ。行くよ」
「わかったよーって白ちん?」
自分の名前を呼ばれてはっと気づく。
周りを見ると誰もおらず数m離れたところに黄瀬たちは居た。
俺は慌てて走って皆の元へ向かう。
「ぼーっとしてるなんて珍しいね、真白」
「煩い」
「そんなに金剛力士像が好きなのか?久遠は変わってんなぁ〜」
「違うって言ってるだろ。ただ・・・」
「ただどうしたんですか?」
金剛力士像が黒子と青峰にそっくりだな、って思っただけ。
そう小さく呟いたら盛大に笑われた。
「ひっどこがそっくりなんスか。青峰っちはまだいいとして黒子っちは勇ましいのいの字もないっスよ」
「それどう言う意味ですか、黄瀬くん」
「黄瀬に賛成なのだよ。お前はつくづく考えてることがわからん」
「わからなくて結構。だからお前らに言いたくなかったんだ」
それぞれ性格は合わないくせにバスケではピッタリ呼吸合わせて動くところとかがそっくりだなぁなんて思っていた事はアイツらには内緒だ。
話したところできっとまた笑われるのが目に見えている。
大仏さまがいる大仏殿に行くと有名な柱の穴、大仏様の鼻の穴の周りには人だかりが出来ていた。
「よくあの穴をくぐる人見るけどアレなんの意味あるの、赤ちん?」
「あれは無病息災、厄払いができるご利益があるんだよ。敦」
ふーんと紫原は興味なさそうに返事をする。
帝光生も何人か潜っていた。
「おい、黄瀬。お前あれ潜れよ」
「えっ嫌っスよ!絶対俺抜けないっスもん。体デカいし。それだったら小さい黒子っちや久遠がいいって」
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