「本当に鹿だらけなんだな・・・」
「思ったよりいかつい顔してますね」
修学旅行3日目。
今日は奈良へ来ている。
東大寺へ向かうために奈良公園を歩いている。
周りは鹿だらけ。
おっさんのような顔をして横になっていたり、道路の真ん中をわが物で歩いていたりしている。
中には店の中へ平気な顔で入っていってる鹿もいた。
まるで人より鹿の方が上位に立っているような錯覚に陥る。
「ねー青ちん。鹿せんべいっておいしいかな?」
「しらねーよ。食ってみれば?」
「っまず〜い。白ち〜んお茶ちょーだい!」
べぇ〜っと舌を出して若干涙目になって俺の元へ向かってくる紫原。
俺はバッグの中からお茶のペットボトルを出して紫原へ渡す。
「ん〜。やっぱお茶おいしいや。ありがと」
「ああ。そんなにまずかったのか?」
「何にも味しないの。あまぁい方がよかったよ・・・」
お茶のペットボトルを返してもらうと紫原はポケットの中から飴をだして口直しにと舐め始めた。
「へっ馬鹿だよなぁ。紫原も」
「とかいいつつも最初に食べてたのって青峰っちっスよね。俺見てたんスよ」
「別に俺そんなもん食ってねーし!出鱈目言ってんじゃねーぞ黄瀬!」
青峰は黄瀬の肩をガクガクと揺らす。
ほんのり頬が赤いのは図星だからだろうか。
「それより真白くんどうしましょうね。囲まれてしまいました」
「・・・だな。紫原からせんべい貰うのはいいけどここまで集まってくるとはな」
もういらなーいと4枚ほど鹿せんべいを貰ったのはいいがそれを目当てに鹿が寄ってくる。
鼻息が荒くて怖い。
鹿さんに消えてもらうように鹿せんべいを遠くへ投げて注意を散乱させ鹿を払った。
「お前らはだからバカなのだよ。頭を使えばいい」
眼鏡のブリッジを上げながら緑間は言う。
頭を使えばいいって言って鹿の手の届かないところに隠しただけだけどな、せんべい。
しかし鹿も頭がよろしいようで後ろから緑間の足をつつきバランスを崩す。
「むっ!?」
緑間が後ろを振り返ると鹿の大群が並んでいた。
早くくれよ、と言わんばかりな顔。
「み、緑間っち!せんべい渡した方がいいっスよ!アイツ等の目怖いっス!」
黄瀬は少し遠く離れた場所で緑間に向けて叫ぶ。
あまりの黄瀬必死さに緑間は素直に鹿に残りのせんべいをあげて鹿の大群を追い払った。
→