「・・・でなんでこれなんだ。黒子」
「いいじゃないですか。バツだと思えば」
「っぷ、化粧でちょっとは強面隠れてるじゃねーの」
「確かに久遠って強面の部分抜けば女の子っぽいっスね」
「お前のおは朝は口走って自分に不幸が訪れるかも、なのだよ。当たってるな」
「真白、似合ってるよ」
「うれしくない」
場所は清水寺に代わり、行くまでの道に舞妓さん体験があってそれをバツにしようと赤司が言ったのは30分前。
あれよあれよと脱がされ、着せられ、化粧され。
俺は姿は立派な舞妓となっていた。
桃色の生地に桜が散りばめられている。
着物は苦しいし、頭は鬘で重い。化粧も痒いし全てが不快。
周りの観光客もこちらをチラチラ見てくるし。くそっ
げんなりしながらも本堂につく。
黄瀬は2本の杖を見つけ指を差す。
「あれなんスか?」
「あれは確か鉄の錫杖(てつしゃくじょう)というものなのだよ」
「確か重さ90キログラム以上の大錫杖と14キログラムの小錫杖・・・だったかな。小さい方は女性でも抜けるらしいが大きい方はどうだろうね?」
「よーし。青峰っち大きい方抜きましょうよ!」
「おお。やってやらぁ。抜いたら今日の昼飯奢りな」
「上等!」
いきなり始まった力比べ。大錫杖はよほどの力がないと抜けないはず。
2人は交互に頑張って引き抜こうとする。
ふと周りを見るとギャラリーができていてなんだか恥ずかしい。
「黒い兄ちゃん頑張れやー!」
「金髪の子がんばってー!」
声援まで加わり始めて大事になってきたようだ。
「真白くん。この騒ぎを借りて抜けましょうか」
「それがいいね」
俺と黒子はすっと抜ける。
赤司には一応伝えてあるから大丈夫だろう。
「黒子ありがとう。あんな中にずっといたら恥ずかしくて死にそうだった」
「いえいえ。でもその気持ちはよくわかります。2人もきっと抜くまで止めないでしょうから」
2人でぐるっと本堂を一回り。帰ってきたらまだやっていたものだから流石に止めた。
すると観客からは、
「べっぴんなネェちゃんようやったわー」とか
「え?なになに?この勝負ってあの子をモノにするための勝負だったの?」
とか変な勘違いが生まれた。本当に今日のおは朝は悪かったらしい。
黄瀬と青峰は俺が機嫌悪くなったのを知ってか今日の昼飯を奢ってくれた。
今日の昼飯はにしんそば。京都に来らこれを食べないと気がすまなかったんだ。
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