「あれ?真白くん?」
「・・・遥花さん?」
ブラブラと歩いているとLock第二支部支部長の池脇遥花さんがいた。
こんなところにいるなんて珍しいものだ。
「真白くんの制服姿って入学式以来ね。ホストみたい」
「それ褒めてるんですか?貶してるんですか?」
褒めてるに決まってるじゃない。と遥花さんは笑う。
確かに俺が通ってる帝光中は白いブレザーに水色のシャツ、黒のネクタイと悪目立ちするような制服だ。
イケメンが来て繁華街でも歩いてればきっと声かけられるだろう。
「第一俺の場合ホストじゃなくてヤクザの間違いじゃ?」
「ヤクザ、ね。とっても可愛いヤングヤクザなこと」
遥花さんは俺の頭をポンポンと撫でる。
群寺さんにしろ遥花さんにしろ俺を子供扱いするのが好きらしい。
いや、子供っちゃ子供だけど。
「ねぇ。久々にあったんだからお昼一緒に食べない?そこにおすすめの場所があるの」
「いいですよ。俺もお腹減ってたんで」
「ありがと。真白くんの学校のこと聞かせて?群寺くんからは生き生きと学校に行ってるとしか教えてくれないの」
背中を押されて足を強制的に進める。
今日の遥花さんはご機嫌のようだ。
「ここよ?」
「はぁ・・・」
数分歩き立ち止まったのは1件の民家。
レストランとかそういうのを想像してたからどう反応していいかわからない。
遥花さんはニコニコとまた背中を押してその民家へ入る。
1歩入るとそこには大きな暖炉があった。
そして優しそうな店主が迎える。
「いらっしゃいませ。あら池脇さん」
「どうも。いつもの場所、空いてる?」
「ええ。でも今日は雑誌の撮影と取材があるのでちょっと煩いですけどいいですか?」
「もちろんよ。いつもの席が空いてるなら別にいいわ」
畏まりました、と一度お辞儀をし店主に案内される。
そこは店の一番隅。
店の全体が見渡せる場所だった。
「ここね。現場に出てた頃に偶然見つけてからずっと来てるの」
「へぇ〜。いいところですね。落ち着ける」
「でしょ?ここのオムライスが絶品なのよ。あと奥さんの手作りのチーズケーキが」
俺は注文を遥花さんのおすすめに任せた。
「ごゆっくりどうぞ」
でてきたのは先ほど言ってたトマトソースがかかっているオムライスにチーズケーキ。そしてブラックコーヒー。
「真白くん最近どう?暴走とかしてない?」
「特にはしてないです。むしろ最近は加年停止(エンドレス)の方が怖いです」
「そうねぇ・・・最近の結果を見るとずっと一定のようだし。学校はどう?」
オムライスはとろとろの玉子に包まれているチキンライスとコクのある甘酸っぱいトマトソースが絡み合っている。
「学校は普通。でも最近やたら絡んでくるヤツらいます。6人ほど」
「あら。よかったじゃない。お友達がいるのはいい事よ。喜びも悲しみも嬉しい事も辛い事も共有できるし。真白くんは久遠くんよりも独りでいようとするんだから」
チーズケーキはレモンの風味が際立っていて爽やかで甘いものが苦手な人でもきっと食べるだろうし、コーヒーとの相性もいい。
「美味しいです。遥花さん」
「ふふ。よかった。久々に真白くんの子供っぽい笑顔見れただけで私は嬉しいわ」
また、遥花さんは俺の頭を撫でた。
撫でるまでに収まらず身を乗り出して抱きしめる。
俺は何が起こってるか分からなくてただ頭が真っ白になった。
ガタガタ
「黄瀬くん!?」
「青ちーん?」
なにやら後ろが五月蝿い。
「あら怖い」と遥花さんの声と共に離れる。
後ろを振り向くと、
「お前ら・・・?」
バスケ部のヤツらが全員何やら焦って立っていた。
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