青峰 Side
自分のでた試合はつまらなかった。
手応えもなんもねぇ。
俺がいるからと怖気つきやがって全然試合にならなかった。
楽しみを踏みにじられたイライラがただ募っていく。
バスケがしてぇ。
「青峰くん。黄瀬くんの試合始まりますよ」
「黄瀬ぇ?アイツまだ試合してなかったのか」
「ええ。あそこのコートでやるみたいです」
テツの指差すコートを見るとそこにはさっき知り合った久遠がいた。
アイツ黄瀬の相手チームなのか。
「見に行きますか?」
「ああ」
試合は黄瀬のダンクから始まった。
「黄瀬くん。最初から飛ばしますね」
「だな。別にバスケ部がいるわけでもないから張り合いもな・・・」
張り合いもない、そう俺は言うつもりだった。
「ダンクがどうだって?黄瀬」
久遠が3Pを決める。まるでアイツを連想させるような綺麗なフォームから繰り出されるシュート。
俺は思わず息を飲んだ。
「彼のフォーム綺麗ですね。青峰くん彼のこと知ってますか?」
鉄壁な無表情のテツでさえも表情を崩す久遠のフォーム。
「久遠真白。今日初めて会ったんだ。名前しか知らねぇよ」
「初めて?転校生ですか?」
「いーや。席替えしてヤツの事を知ったんだ。久遠は俺のことを知ってたみたいだがな」
ふぅん、とテツは鼻で返事をしつつじっと試合を見る。
部活でやってるような点の応酬。
見ていてワクワクする。早くこの試合が終わってしまえばいいのに。
そして俺が久遠と試合をしたい。早く、早く!
試合は60−58で黄瀬のチームが勝ち、授業の終わるチャイムも鳴った。
ようやく久遠と試合ができると思ったのに。
高ぶった気持ちを落ち着かせるために俺はひとまず楽しそうな黄瀬を蹴り飛ばした。
(お前だけ楽しい思いしやがって!)
(痛い、痛いっス!青峰っち!)
黄瀬が最初真白に対してふてぶてしかったのは警戒心から。
試合の最後に苗字から名前呼びに変わったのは警戒が和らいだ証
2012/10/20←