能力が目覚めたころだろう。
あの時は今以上に目つきも態度も悪かった。
「お兄さん、誰?」
‘俺’が問いかける。
「俺はお前だ。数年後のお前だ」
剣を‘俺’につきつけ言う。
確かに一番恐る敵だ。
これだったらまだ兄貴や尚登の方がマシだった。
「ふうん・・・」
‘俺’はじっと俺を見つめ視線を隣の柱に移す。
柱・・・しまっ!?
ミシミシ
柱の軋む音が聞こえ、そしてその柱が砕け散る。
「っ!」
咄嗟に剣から盾へと変形させる。
当時はコントロールって言葉を知らないぐらいに能力で暴れていた。
セーブもせずただデタラメに物を散々壊し、傷つけ、それを楽しんでいた。
‘俺’は笑いながらそこら辺の物を念力・念動作用(キング)で動かし、俺を的に射止める。
転がってるメスやハサミ、ビン、ベッドなどなんでも。
盾でも塞ぎきれないものは避けるしかない。が、全てを避けれるほど相手は優しくなかった。
「っ」
メスが腕に刺さる。
動きが緩んだせいで物が雪崩のように襲いかかってくる。
痛くはない。だってこれはプログラムだから。
だけど痛い、痛い、胸が・・・痛い!
「数年後の俺って弱いんだね・・・なんでこんなに弱くなっちゃったの?」
クスクスと‘俺’は笑い俺に近づく。
どうして?
そんなの守りたいものがあるから。
弱くなったんじゃない。
傷つけさせる強さ、じゃなくて守るための強さを身につけたから。
だから、
「うるせぇ。そんなに知りたかったら数年後まで待て」
盾を剣に変え、‘俺’の心臓へ突き刺す。
【プログラム停止します――――】
‘俺’は俺ににこりと笑い、そして煙のように消えていった。
← →