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なんて事があった10年前。

俺は32になっていて新米教諭から主任にまで上り詰めていた。

卒園式の日、どうせすぐに忘れるさと婚姻届けの妻の部分に名前を書いて黒子くんに渡した。

それからずっと会っていない。

ま、そんなもんだよな。あの年頃の子なんて。

そう自分に言い聞かせて今日も園児たちと戯れる。


「水無月さん」

「はい・・・って黒子くん?」

「ええ。水無月さん。僕、待ちました。今日16歳になりました」


あの時と変わらない瞳。俺と肩が並ぶほど大きくなった背丈。

黒子くんはあの時の婚姻届けを広げて俺に見せる。


「あの時の約束を果たしに来ました。結婚してください」


あれ本当だったのか。じゃなかったら婚姻届け持ってないもんな。

心の何処かで迎えに来てほしいと思ってはいた。

ただそれを認めたくはなかった。

黒子くんと俺は男同士で、尚且つ黒子くんは俺の初めての卒園を見届けた園児で。

でも、それを打ち砕いて見せますと言わんばかりの強い瞳に俺は笑って黒子くんの手を握る。


「俺で、よかったら」


水無月燐。32歳。この度16歳年下の夫ができました。



Nov 28, 2012 17:19
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