8月16日の今日は私の誕生日だ。
だけども、夏休み期間の中途半端な時期の誕生日は、家族以外あまりお祝いされない。学校があったら友人から「おめでとう」の声とプレゼントが手渡されると思う。夏休み期間だと、会う友人も限られるから大体はメールで手軽に済まされるのが現実だったりする。
「うわあああああああん!!!!ヒマヒマー!!!」
抱きしめていた枕を放り投げて、壁に向かって蹴りあげた。枕はどしん、と壁に当たり床に向かって垂直に落ちていった。握り締めていた携帯を見ると新着メールが1件。部活の後輩から当たり障りのないおたおめメールだった。これに対して当たり障りのない返事を送ると、携帯を床に落ちた枕に向かって放り投げた。
彼氏がいたら、昼前に公園に待ち合わせをしてお洒落なカフェでご飯食べて、繁華街でウインドウショッピングを楽しみ、夜景の見えるスポットで誕生日プレゼントを手渡してもらってクライマックス!だろう。
いや、彼氏はいる。
だけども、この彼氏は彼女を放っておいて次の大会に向けて練習に励んでいる。いや、その真面目なところが大好きなんだけどね!!あともう、毎度のことなので慣れました!!
でも、今日ぐらいは一緒に過ごしたかったかな。
つくづく女心とは面倒臭いと思う。
ピンポーン。
家のインターホンが鳴るが、今家には私しかいない。親は仕事でいないし、私は夏休み期間で暇な学生ニート様だ。親から宅配便が来るとか聞いていないから、なにかの勧誘だろう。居留守を決めた私は、シカトすることにした。今日の晩御飯何かな。ケーキはあのケーキ屋のショートケーキがいいな。
ピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポン。
「うるせえええええええええええ!!!!勧誘しつこいんだよおおおおおおお」
鳴り止まないインターホンにイライラで腹が立った私は、床を乱暴に歩きながら玄関へ向かった。
「うるせ…」
「よう」
「よ、由孝!?」
そこには、部活帰りなのかジャージ姿の私の彼氏の由孝がいた。部屋着でラフな格好の私は慌てて手櫛で身なりを整えるが手遅れだ。
「なまえ、誕生日おめでとう」
爽やかな笑顔で、薄ピンク色の一輪のバラを手渡された。
「ありがとう…」
嬉しくて、嬉しくて。由孝に抱きつくと、優しく背中をさすってくれた。
単純かもしれないけど、今日は最高のお誕生日だ!
Happy birthday
我が友人に遅すぎたお誕生日プレゼント。
遅すぎてごめん。