冷え性にとって冬は拷問だ。吐息で悴む指先を暖めるけど、芯から冷え切った指先には全く効果がなかった。前の席の宮地は私の姿を見て、驚いた表情を浮かべると、鼻で笑った。
「お前、芋虫みたいだな」
「寒いんだよ。だから冬は嫌いなんだよ」
セーラー服の上に厚手のカーディガン、大判のひざ掛けをマントのように体に巻き付け、マフラーをグルグル首に巻いて、120デニールの厚手のタイツを2枚重ねて履いて完全防寒していた。確かに、今の私は宮地の言う通り、芋虫みたいだった。でも、これはボロ…伝統ある校舎の暖房が最弱だから仕方がない。
「その格好、完全に女捨ててるぜ」
宮地はそう言うと、蔑むように見つめた。私は少しイラッときたので、悴んで感覚が麻痺した手で宮地の顔面を掴んだ。
「つ、冷たっ!バカ!離れろ!」
「私の気持ちが分かった」
「いや、全然」
「宮地いいいいい」
「冷たい!離れろ!焼くぞ!!」
オーバーにリアクションする宮地が面白くて、手に力を入れるけど、結局宮地に剥がされてしまった。
「つーか、みょうじの手冷てえな」
「私は心が温かい、優しい人間だからね」
「お前の場合、ただの冷え性じゃね?」
「もう1回逝っとく?」
宮地は毒舌を吐くが、冷たい手を構えると、口を閉ざした。でも、宮地の顔を掴んでいた手が少し温かくなっている事に気がついた。
「宮地って体温高い?」
「あ?なんでそんなこと聞くんだよ」
「さっき、顔掴んだとき温かかった」
「それは、俺が心が温かい優しい人間だからな」
ドヤ顔で自慢げに答える宮地に、私は鼻で笑うと、宮地の大きな手が私の顔を掴んだ。
「あ、あったかい」
程よい宮地の体温に目を細めると、何故か宮地は手を引っ込めた。宮地にもう1回顔を掴んでとせがむと、「うるさい」と消え入りそうな声で呟くと、そのまま机に突っ伏してしまった。
(あの表情、無防備すぎるだろ)
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宮地と冷え症の女の子(同級生)