お姫様の仰せのままに

「キヨ、ジュース買ってきてよ」

暖かい室内なのに、目の前の幼馴染のなまえが俺の眉間に100円硬貨を押し付けているせいで、ひんやりとしていた。

「はぁ?自分で行けよ」

「なんで私が行かないといけないの?」

なまえはさも当たり前のように言うと、ギロリと俺を睨んだ。硬貨を押し付けていた指が徐々に力が入ってきて地味に痛い。

「キヨ、ジュース買ってきて」

これが最終勧告。ゆっくり離れるなまえの指と眺めながら、きっと俺の眉間には間抜けにも貼り付いた100円の跡がくっきりついていると思うと恥ずかしくて死にそう。



自販機でなまえから渡された100円を投入すると、いちごオレのボタンを押した。なんだかんだで、なまえの言うことを聞いてしまう俺の奴隷体質をなんとかしたいとは思うが、逆らうと俺の黒歴史をばら蒔かれるので、何もできない。

「あっれー?宮地サンじゃないっすかー?」

肩を叩かれて振り返ると、後輩の高尾が気持ち悪い位笑顔だった。俺は高尾の広い額にチョップすると少しスッキリした。

「宮地サン、マジヒデー」

「俺は今、ムシの居所が悪い」

「またなまえサンにパシられてるんすか?」

高尾の肩に一撃をお見舞いすると、高尾は嬉しそうに笑うから先輩としてお前が少し心配だよ…と全く思っていないけど。高尾は先ほど俺が買っていた自販機に1000円を投入すると、コーラとおしるこのボタンを押した。「緑間か?」と聞けば、高尾は頷いた。

「じゃあ、お前も仲間だな」

そう言うと、高尾は大きな瞳が溢れる位目を開くと、キョトンとした。

「いや、真ちゃんのはついでっすよ?ジュース買いに行くって言ったら、ついでに頼むって言われたからですよ?」

「…そうか」

高尾に真顔で返されて、俺は肩を落として教室までの冷たい廊下をとぼとぼと歩いた。
教室へ戻ると、なまえは待ちくたびれたように腕を組んで不機嫌そうに待っていた。

「遅い」

「3年の教室から自販機遠いんだから仕方ねーだろ」

よく振ったいちごオレを差し出すと、なまえの不機嫌そうな表情から嬉しそうに口元を緩めた。我が儘で、轢きたくなるほどムカつくけど、俺にしか見せないふとした笑顔とか好きだったりする。絶対言わないけど。



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女王様な女の子と宮地君

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