背伸びをして、両手で宮地先輩の頬を挟むと、端正な顔立ちが少し崩れた。それが面白くて笑うと、宮地先輩は不快なのか眉間に皺が寄る。
「なまえ…今すぐ手ェどけねーと轢くぞ」
「宮地先輩、キスしたいです」
私はそう言うと、いつものクールで飄々としている宮地先輩は顔を真っ赤にする。すっごく可愛い。でも、ここで大きな問題が発生。
「でも、先輩。背が高すぎて届かないです」
宮地先輩は日本人の平均身長を軽く超えていて、私は至って普通の平均身長。精一杯背伸びしても唇には届かないのだ。
宮地先輩の頬を挟んだ両手を離すと、自分から仕掛けたのにすごく恥ずかしくなって俯いて、早く先輩の決まり文句の「轢くぞ」を待機する。
「なまえ」
宮地先輩はいつもより低い声で私の名前を呼ぶと、私の両頬をパチンと両手で挟んだ。頬がヒリヒリする。
「俺もキスしたい」
そう言うと、宮地先輩は目蓋を閉じた。私の胸の鼓動が激しくなった。私も目蓋を閉じた。
「バーカ」
両頬が引っ張られ、目を開けると意地悪そうに笑う宮地先輩が映った。