マーガレットの花言葉

顔面蒼白で教室に入ってきた緑間は、いつも持ち歩いているラッキーアイテムを持っていなかった。一緒に入ってきた高尾がケラケラ笑いながら、萎縮している緑間の肩を叩いていた。

「なまえちゃん、おはよう」

「おはよー高尾、緑間」

「おはようなのだよ」

ゲッソリとしている緑間が椅子に座ると、何もしていないのに派手な音を立てて転んだ。それを見て高尾が、「今日のラッキーアイテムが見つからなかったんだって」と耳打ちしてきた。

「緑間、今日のラッキーアイテムあげるよ」

床に転がったままの緑間の前髪に、本日の蟹座のラッキーアイテムである『マーガレットのヘアピン』をつけた。高尾はその姿を見て腹筋が崩壊したみたいだが、元々美人さん顔の緑間にはメルヘンチックなマーガレットのヘアピンは違和感がなかった。

「緑間可愛いよ!似合ってる」

「真ちゃんマジで可愛いよ、プクク」

緑間はメガネの縁をあげ、鼻で笑うと、笑っている高尾に拳骨をお見舞いすると、小さな声で「ありがとう」と言った。それに対して、驚いてしまって「あの緑間がお礼を言っただと…」と、大げさに騒ぐと「俺を何だと思っているのだよ!」と私も緑間の拳骨餌食になった。



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放課後。帰宅部の私は真っ直ぐ帰路に向かっていたけど、教室に携帯を忘れたことに気がついて教室までの廊下を全力疾走していた。早くしないと楽しみにしているドラマの再放送を見逃しちゃう。教室のドアが開いていて、顔を覗かせるとモデルをやっている美人な隣のクラスの佐藤さんと緑間が喋っていた。珍しい組み合わせだなと思いながらも教室に入ろうとするけど、何か入りにくい雰囲気だった。普段、サバサバしている佐藤さんが内股でなんかモジモジしてる。それに対して、前髪にマーガレットのヘアピンをつけた身長195cmの大男は不思議そうに佐藤さんを見ていた。

「緑間君、私…あなたが好きです」

こ、告白現場でしたああああああ!空気読まずに「忘れ物しちゃったてへペロ☆」って入らなくて良かった。それにしても、緑間の返事が気になって仕方がない。おい、緑間。リア充の仲間入りするのか。

「すまないが、俺は貴方の期待に応えられない」

緑間は、何か言いかけている佐藤さんを置いて、私が潜んでいるドアの方へ向かってきた。

「悪趣味な奴め」

緑間は縮こまっている私を見てそう言うと、スタスタと歩き始めた。私はその背中を追いかけた。

「ねーねー、なんで断っちゃったの?」

「お前に関係ないのだよ」

「佐藤さんって美人だし、モデルやってるし、いい子じゃん」

「興味ない」

「もしかして、好きな人いるの?」

緑間の足が止まった。そして、私の方へ振り向くと、前髪につけていたマーガレットのヘアピンを取った。そして、私の前髪を左へ流すと、そこにヘアピンをつけた。

「これが俺の気持ちだ」

そう言うと、私の頬に手を添えた。そして、唖然とする私に緑間は意味深の笑みを浮かべた。

「マーガレットの花言葉を調べるのだよ」

緑間は満足そうに言うと、踵返して歩き出した。私は首を傾げて緑間の背中を見送るが、緑間は階段を転げ落ちていった。



(マーガレットの花言葉は『心に秘めた愛』)



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緑間で友達以上恋人未満の関係でほのぼの

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