彼の甘え方

お気に入りの音楽を聴きながら、体育館の明かりが消えるのを待っていた。最終下校時間はとうに過ぎているから校舎は真っ暗で不気味だし、冷たい空気が体に突き刺さる。息を吐けば白く、やがて薄くなり消えた。

「風邪ひくぞみょうじ」

右耳に挿していたイヤホンが不意に引っ張られた。振り向いたら、寒いのに薄手のTシャツ姿の清志が立っていた。タオルで流れる汗を拭いながら、さり気なく私の肩に見慣れたオレンジのジャージをかけてくれた。

「いいよ、清志が風邪ひくよ」

「うるせぇ、俺は運動して暑いし。あと、今着たらベタベタして嫌だ」

私の隣にこぶし2個分空けて座ると、パタパタと手で仰いだ。微かにシトラスの制汗スプレーの匂いがした。

「これからシャワー浴びてくっから、あと10分ぐらいかかる」

「うん、分かった」

「なぁ、さっきから何聴いてんだ」

「最近ハマったバンドの曲」

清志の耳にイヤホンを差し込むと、身長差でコードがピーンと張った。私のイヤホンが取れそうで少し押し込むと、今度は清志が取れそうになったのか少し背を丸めた。その姿勢が不快なのか、私を睨んだ。

「つーか、俺の貸したCD聴けよ」

「清志のCD全部アイドルじゃん」

「うるせー」

清志はそう言うと、私の肩に頭を置くと目を閉じた。曲がアップテンポなロックから、少々眠気を誘うスローテンポの曲が再生された。

「シャワー浴びてくるんじゃなかったの」

「んー、あとで」

まるで子供みたいに目をこする清志に、笑いそうになる。ウィンターカップ開催が近づくにつれて厳しくなる練習で疲れているのか、しばらくすると清志からスヤスヤと寝息が聞こえてきた。私は、肩にかけられたジャージを宮地の肩にかけると、肉刺だらけだけど、大好きな清志の手を握った。



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疲れた宮地さんを甘やかす夢主

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